「第91回夏の甲子園」明豊・今宮健太に“直球勝負”を挑んだ常葉橘・庄司隼人 (2/2ページ)

アサ芸プラス

当然、勝利まであと3人と迫っている側からすれば、勝負を避けるのもやむを得ないケースだった。だが、ここで常葉橘のエース・庄司が選んだのはなんと“男と男の真っ向勝負”。初球、145キロの直球はファウル。2球目、146キロの直球もファウル。3球目、147キロの直球はボール。庄司が投じたのはすべて145キロ以上の直球であった。

 ここから2球ファウルが続いた6球目。庄司が投じたのはまたも直球。試合後に「そういう性格の投手というのはわかっていた」と語った今宮はこれを狙い打ちし、ライト前へと弾き返す。6‐6。明豊がついに追いついたのだった。しかし、続くチャンスは庄司の力投で生かせず、この回は同点止まりとなる。

 その裏、今度は2死から常葉橘の2番・小泉泰樹が一塁内野安打で出塁。3番を打つ庄司に打席を回す。そしてこの場面、明豊のマウンドを守る今宮は“勝つために”冷静であった。庄司との初対戦となった4回裏の打席で153キロの直球を左前適時打されていることもあり、フォークから入った。その後、直球、スライダーで1ボール2ストライクとなり、最後に投じたのは内角の厳しいコースへの139キロ直球。狙い通り庄司を二ゴロに仕留め、試合を延長戦へと持ち込んだのである。

 決着がついたのは延長12回だった。明豊は1死後から遊撃内野安打、三振振り逃げ、死球でチャンスを拡大し、1番・平井徹の二ゴロの間に勝ち越し。明豊は11回から3番手で登板した2年生右腕・山野恭介が常葉橘に反撃を許さず、8‐6で逃げ切ったのであった。

 この試合の注目はやはり今宮と庄司の対決であろう。9回表の庄司は勝負にこだわり、今宮に痛打された。その裏、打席に入った庄司は自分と同じように真っ向勝負を期待したが、今宮がこだわったのは“勝利”だった。なぜか。実はこの大会、明豊には絶対に負けられない相手がいた。超高校級左腕・菊池雄星擁する花巻東(岩手)である。明豊は春の選抜の時に0‐4で敗退しており、そのリベンジを狙って甲子園に帰ってきたからだ。

 同じこの日の第3試合でその花巻東が快勝。続く準々決勝でついに因縁の対決が実現したのである。その試合は明豊、花巻東どちらも譲らず。延長戦に及ぶ死闘のすえ、またしても花巻東が勝利したのであった。

(高校野球評論家・上杉純也)=敬称略=

「「第91回夏の甲子園」明豊・今宮健太に“直球勝負”を挑んだ常葉橘・庄司隼人」のページです。デイリーニュースオンラインは、庄司隼人常葉橘明豊今宮健太甲子園エンタメなどの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る