「第94回夏の甲子園」済々黌が「ドカベン」の名場面を再現! (2/2ページ)

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そのため、鳴門が三塁にボールを送って「三塁走者の離塁が早かった」とアピールし、第3アウトを三塁で置き換えればこの得点は認められなかったのである。しかもアピールできるのは守備側がフェアグラウンドを離れる前まで。この試合の球審は鳴門ナインがベンチに戻ったのを確認(アピール権の消滅)して、得点が入ったことを球場側に伝えた。こうして7回裏に“1”が記されたのである。

 済々黌は熊本県が誇る屈指の文武両道の名門校。進学校らしい頭を使ったプレーで、日頃から野球規則を熟読していたという。シートノックにはアピールプレーも組み込んだ。だからあそこで三塁にボールが転送されたら仕方がなかった。わかってやった好走塁。さらに中村はこうも付け加えた。

「このルールは漫画の『ドカベン』を読んで知っていたので迷いなく走れました。3アウトになったあと、鳴門ナインが早くベンチに戻ってくれることを祈ってました」

 漫画「ドカベン」の35巻では、1死満塁からのスクイズが投手への小飛球となり、飛び出した一塁走者の山田太郎(本編の主人公)が戻りきれずにアウトとなったが、この間に三塁走者の岩鬼正美がホームインしている。それを小学生の時に読んでいた中村は「(甲子園で)岩鬼になってました」と笑った。

 試合は結果的に、2年生エースの大竹が鳴門打線にわずか4安打しか許さず1失点完投。3‐1で勝利した済々黌が3回戦進出を決めた。だが、続く試合では藤浪晋太郎(阪神)‐森友哉(埼玉西武)の強力バッテリーを擁し、史上7校目の春夏連覇を狙う大阪桐蔭の前に2‐6で完敗。それでもあの「ドカベン」のプレーを再現したチームとして高校野球ファンの脳裏に深く刻まれることとなったのである。

(高校野球評論家・上杉純也)=敬称略=

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