僕が『全裸監督』をみない理由:ロマン優光連載142 (1/4ページ)

ブッチNEWS

僕が『全裸監督』をみない理由:ロマン優光連載142

ロマン優光のさよなら、くまさん

連載第142回 僕が『全裸監督』をみない理由

 Netflixで配信中のドラマ『全裸監督』について編集氏から書いてくれという依頼があったのだけれど、自分は観ていないし、今後も観る気がしないので、ちょっと書けないなと思った。80年代というギラギラ時代の黎明期のAV業界という狂った業界で活躍した異常な人物を主人公にし、それを山田孝之のような役者が演じるドラマというのは、単純に観たら面白いだろうなとは思う。しかし、自分はそれを単純に楽しめないだろうなと思うのだ。そういうわけで、その「なんで観る気がしない」かについて書いてみようと思う。
 先日、たまたま小野田寛郎氏を扱った地上波のテレビ番組を観てしまった。小野田氏と言えば、第二次世界大戦終戦後もフィリピンのルバング島で29年間に渡り潜伏し遊撃戦を行っていた人物だ。しかし、その遊撃戦と称するものの内容には、現地の民間人に対する略奪、放火、殺人といったものが含まれているわけだが、番組では明確にそこに触れることはなかった。現地のガイドに小野田氏のことをどう考えるか聞いたシーンでは、ガイドが話してる最中に不自然に場面が切り替わり、その辺の話をしている部分をカットしたのだろうなという気がした。そこら辺の話をないことにされて、単純な感動的な話にされても落ち着かなくてしょうがない。
 そういう、あるべき事実が語られていないと猛烈に違和感を感じてしまうタイプなので、すごく居心地が悪くなってしまったわけなのだが、地上派のゴールデンタイムの情報バラエティーがかった番組で、そこまでちゃんと俯瞰で人物を描くわけがないのだから、観てしまった自分が悪いとも言える。
 ドラマ『全裸監督』は本橋信宏氏のノンフィクション『全裸監督』を元にしたフィクションなわけであるが、主人公は「村西とおる」という実在する村西とおる氏と同じ名前の人物である。自分は村西氏がAV界の寵児であった時代の記憶があるし、本橋氏の何冊かの著作をはじめとして氏に関する文章をいくつか読んできている。黒木香氏についてもそうだし、その後、二人がどういうことになっていくかも知っている。そして、現在の村西氏の言動についても。

「僕が『全裸監督』をみない理由:ロマン優光連載142」のページです。デイリーニュースオンラインは、カルチャーなどの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る

人気キーワード一覧