決死の作戦と兄弟愛!天下一の強弓・源為朝が唯一倒せなかった大庭景義の武勇伝【中】 (2/4ページ)
「やい大庭め!うぬは戦(たたこ)うとるのか、舞うとるのか!正々堂々と勝負せい!」
そろそろ潮時と見た平太はニヤリと笑うなり馬に一鞭入れて、為朝目がけて一直線に駆け出しました。
互いの位置関係は弓手(ゆんで。左手)を向けあい、矢を射かけるのに適した体勢となっています。
「さぁ参れ……大雁股(鏃)の錆にしてくりょうぞ……!」
やっとのことで本領を発揮できる、と為朝は舌を舐めずり、引目の矢をつがえた弓をしっかり構えます。
(まだじゃ……もっと引きつけよ……!)
猛然と迫り来る平太に狙いを定め、大雁股の鏃が敵の命を捉えます。
(三間、二間、一間※5……今あっ!?)
為朝が矢を射放たんとしたその瞬間、平太は手綱を操って馬体をずらし、為朝の馬手(めて。右手側)に回り込んだのでした。
通常、弓は左手で持ち(だから弓手と言います)、右手で弦を引いて矢を射放つため、右側の敵に対して不利となりやすい特性があります。