あのちゃん脱退:ロマン優光連載145 (2/6ページ)

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しかし、あのちゃんがどんなに可愛くてセンスがよかろうと、それだけではあのような強い求心力は生まれてはこない。いつも何かに抗っているような、世の中と折り合いがわるい、あのちゃんの言葉に対する共感があってこそ、それは生まれてくる。

 あのちゃんを「メンヘラ」という言葉で片付けようとする人は多い。ただ、私にとっては「思春期」そのもののような人だ。世界に対する違和感。裏表ありありで、うまいこと立ち回るような人間に対する怒り。誰も自分のことをわかってくれないという孤独感。汚れた「大人」に対する潔癖な軽蔑。自分が未だ何者でもないということに対する焦りと不安と、自分が何か特別な存在であるかのような確信という相反する気持ち。自分の中の名付け得ない何かから沸き上がる突拍子もない衝動。そういった思春期の想いというのは、鮮烈で綺麗であると同時に滑稽でみっともなく愚かしく、痛々しくて気恥ずかしいと同時に切なくて忘れることのできないものだ。
 そんな「思春期」を、ステージ上の身体と声とSNS上の言葉で純化した形で表現していたのが、あのちゃんという人なのだと思う。

 あのちゃんとゆるめるモ! の関係性も少し不思議な気がする。芸能畑以外の運営がいわゆるアイドルポップス以外の楽曲を扱う「サブカル」っぽい新しい形の地下アイドルのはしりであり、そういった部分で話題になっていたゆるめるモ! なのだけれど、あのちゃんがメンバーであるという部分のみに焦点があたるような扱いを世間的には受けるようになっていった。現場に通わないような人であれば、あのちゃんがたまたま所属しているだけのグループというような認識をしている人もいるだろう。それは違うのではないかとは思う。
 あのちゃんは確かに容姿も優れているわけで、その一点で考えれば、地下でも全然方向性の違うグループや、思いっきり芸能畑でデビューする可能性もあったかもしれない。しかし、渡辺淳之介の元でアイドルをやるあのちゃんというものはどう考えても想像できないだろう。あのようなあり方と一番相性が悪いのがあのちゃんだと思う。やっぱり、田家さんでなければならないのだろう。
 芸能系の事務所ならば、あのちゃんのようなSNSでのあり方は到底許されないだろう。

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