フィンランドの囚人たちは刑務所内でAI(人工知能)に関する最先端技術が無料で学べる
image credit:Pixabay
イソップの逸話に「北風と太陽」という話がある。北風と太陽、どちらが旅人の上着を脱がせることができるかの勝負で、結局は太陽が勝った。そこから転じ、寛容的な対応が厳罰な対応に勝る、という教訓となっている。
北欧の受刑者に対するスタンスはまさに太陽側だろう。罪を憎んで人を憎まずの精神にのっとり、快適空間を実現していることで有名だ。
人道的でしかもセキュリティ管理もしっかりしており、下手をすれば企業のオフィスより快適そうに見えることもあるともいわれている。
そんなわけで、フィンランドの刑務所では刑務作業も最先端のようだ。
刑務作業といえば肉体労働を思い浮かべる人も多いはずだが、なんとノートPCを使った作業を行い、人工知能(AI)のスキルを刑務所に居ながらにして学べるという。
・刑務作業はノートPCでデータ選別
スタートアップ企業・Vainuは、仕事を請け負ってくれる相手を探すための包括的なビジネス向けデータベースを構築している。
そのためには膨大なニュースを読み、それを分類するという作業(たとえば「アップル」は企業名か果物かなど)を人間の手で行わねばならない。
こうした作業は英語ならば比較的容易だ。アマゾンの「メカニカルターク」なるウェブサービスを利用できるからだ。しかし、フィンランド語のような英語以外の言語となると途端に厄介なものとなる。そこでVainuが目をつけたのが、フィンランドの受刑者たちだった。
Vainuはヘルシンキとトゥルクの刑務所にそれぞれ10台ほどノートPCを送り、作業を依頼。刑務所側は大喜びだった。
何しろAIのスキルはますます重要性を高めているのだ。受刑者にしてみれば、そんな最先端の技術を身につけられる上にお金を稼ぐこともできる。
また作業に必要なのはノートPCだけなので、直接的に危険な武器として利用される心配もない。まさにウィン・ウィンで、今では毎日100人弱の受刑者がVainuのプロジェクトに参加しているという。

image credit:Pixabay
・フィンランドには受刑者向けのAIコースを学べる刑務所も
フィンランドは先進的な刑務所政策で知られている国だ。
同国の刑務所の3分の1は「オープン・プリズン」となっており、受刑者たちは服役中でありながら一般人と一緒に生活し、仕事をしている。
そんなフィンランド南部の都市トゥルクでは、また新しいスマートプロジェクトが実験されている。
その都市の刑務所では部屋や図書室にノートPCやタブレットが置かれており、これを使って受刑者はニュースを読んだり、数学を学んだり、さらには人工知能のスキルアップコースを受けたりすることができるのだ。
コースはヘルシンキ大学がコンピューター科学の学生向けに用意した初級AIカリキュラムをよりわかりやすく仕上げたもので、最後まで終えれば大学の単位を取得することも可能だ。
刑罰局のプロジェクトマネージャー、ピア・プオラッカ氏は自分自身がAIコースを受講してから、刑務所のような施設でも実施可能であるかどうか考えるようになったという。
彼女が提出した企画書は2019年5月に正式に認可され、トゥルクの受刑者はネットを通じて本コースを受講できるようになった。
学校じゃ数学が得意だったもんで、こいつに興味を惹かれてね。でも今まで勉強したこととは全然違うな
と試験棟でコースを受講する10人の受刑者のうちの1人は話す。

image credit:Pixabay
・釈放された受刑者が労働市場に参入するためのITスキルを
フィンランド政府はこの制度を、ITスキルの需要が高い労働市場で、釈放された受刑者がきちんと競争力を身につけられる入っていくための支援として活用している。
受刑者はこうした分野の発展からは取り残されがちだ。経済の変化は目まぐるしいから、出所したらまったく違う労働環境に変わっていたなんてこともある
と本プロジェクトのコンサルタントであるミーガン・シーブル氏は話す。
この秋からは、さらに3つの刑務所でも導入されることになる。シーブル氏はこうした試みから、出席率や終了までの長さなど今後どのように改善できるかデータを収集できればと考えている。
フィンランド政府は、人口の1パーセント以上にAIの基礎を習得させるという目標を立てているそうだ。
References: The vergeなど / written by hiroching / edited by usagi