人事評価制度を「権力の道具」にしようとした社長の末路 (2/3ページ)
「頑固な職人と給料の話をしたくないんだ」
「現場の部長がオレの注意を聞いてくれない」
このスーパーマーケットは昔ながらの八百屋からスタートしたため、「専門外」の鮮魚や精肉といったエリアは専門の職人に任せていた。その職人たちへの愚痴や店舗の現場を仕切る部長への愚痴が社長の口からは漏れていたのである。
そして悪いことに、この会社には社長にモノを言える人間が誰もいなかった。だから、社長が「しっかり仕事をしないと給与が下がることもあり得る」ということで、減俸の仕組みを人事評価制度に組み込んでも誰も反対しなかった。
「社長の愚痴」からは、社長と社員との間に信頼関係が築けていないこと。そして「減俸ありの給与システム」からは、社長が人事評価制度について社員たちを自分に従わせるための「権力の武器」だと考えていることがうかがえる。
スムーズに導入されると思われた人事評価制度だったが、これらのリスク要因によって状況は一気に暗転した。人事評価制度導入の成果を急いだ社長が第一回の査定結果をすぐ給与に反映させると、昇給者がいる一方で、売り場を任される現場の部長、主任クラスに減給者が続出した。
通常、減俸の仕組みを人事コンサルタントが提案するときは、あくまで社員への「けん制」の意味で用いることを提案する。経営者がその意図を正しく理解していれば、減俸評価を乱発するようなことはまずやらない。特に、まだ人事評価制度が馴染んでいないうちに減俸評価を使えば必ず社員から反発が起き、炎上してしまうことは目に見えている。
コンサルタントも減俸制度の意味と乱用することの危険性を経営者に十分言い含めていたが、社長は暴走し、権力ツールとして使ってしまった。
当然、現場は猛反発。元々が経営者と社員に信頼関係がない会社である。売り場を任せてきたベテランの社員が退職をほのめかすと、主だった部下がそれに同調してしまう事態になった。こうなったら社長に勝ち目はない。減給を撤回して矛をおさめたが、社員の抗議に折れる形となったため、社長の威信には消しがたい傷が残ってしまった。