「虚しい」という感情の正体
「虚しい」と感じることはありませんか?
満たされているときでも、なぜかふと感じたりもしますよね。
そのため「虚しい」という感情がわいたときに戸惑う方もいると思います。
今回は「虚しさ」という感覚を掘り下げ、そしてさらに虚しいときの対処法までを考えてみたいと思います。
■「虚しい」とは
精神医学者のフロイトは、人間には今の「生きている」という状態を維持しようという恒常原則とは逆の概念で、虚無に回帰しようという心理原則があると提唱しました。これを涅槃(ねはん)原則といいます。
つまり、虚無になりたいという心の動きは人間が根源的に持っている感情だということ。
したがって「虚しい」という感情はむやみに恐れたり遠ざけたりする必要はないことを、まずお伝えしたいと思います。
◇「虚しい」の意味
「虚しい」という言葉の一般的な意味を見てみましょう。
虚しいとは「中身がない」「空っぽ」「無価値である」という意味です。
この言葉の意味から、心の状態としてはネガティブな状態を表現するときに使われることが多いことがわかりますね。
◇「虚しい」と「悲しい」の違いとは
「悲しい」というのは喪失や失敗など、心が揺さぶられたときの心のさまです。心が揺さぶられるという意味では「嬉しい」も同じです。
一方、「虚しい」は揺さぶられるものが何もないという状態。
「風が吹くと風鈴が揺れる」これが悲しみも含めた喜怒哀楽だとしたら、虚しいというのは風鈴を揺らす風そのものが吹いていないという状態です。
◇「虚しい」と感じるときとは
一般的にどんなときに人は「虚しい」と感じるのでしょうか?
☆(1)孤独を感じたとき
独りぼっちだと感じたとき。これは実際に独りという場合だけでなく、大勢の人や気のおけない友人や恋人といるときでも感じます。
「本当の自分の理解者は誰もいない」ということを実感するような時間に湧き上がります。
☆(2)自分より充実している他人と比較したとき
たとえ自分の心が7割満たされていたとしても、まわりが8割満たされている人ばかりの場合、自分に足りないその1割が非常に虚しく思えてきます。
この場合の虚しさは劣等感や嫉妬感情に近いものになります。
☆(3)物事がうまくいかないとき
この場合の虚しさは、何度やってもうまくいかない、何をやっても目的にたどり着けない、など失敗が続くと生じます。
これを特に「学習的無力感」といい、この状態になるとすべてにおいて「何をしても無駄なのだ」といったやる気のなさから抑鬱状態につながることがあります。
☆(4)自分より優先するべきものを失ったとき
『空の巣症候群』という言葉を聞いたことはありますか? 子どもが進学や結婚などで家を出たあとに母親が感じる虚しい感情を、鳥の巣立ちと絡めて名付けられた言葉です。
自分よりも子どもや家庭を優先して頑張ってきた毎日から突然解放されてしまうと、個人としてどう生きたらよいのかわからなくなってしまうのです。
■この感情は何? 人間が「虚しい」と思う心理
人が「虚しい」と感じるときの心理とはどのようなものなのでしょうか? 考えてみたいと思います。
◇(1)寂しさ
たとえば同棲していた彼氏が家を出て行き、今まで2人で過ごしていた空間に自分しかいない。
こうした「今まで埋まっていたところが空になっている」というギャップは、孤独を浮き彫りにし、虚しさとともに寂しいという感情を混在させます。
◇(2)不安
前述した“空の巣症候群”などもその代表的なものですが、虚しさと同時に「これから自分はひとりで楽しみや生きがいを見つけて生きていくことができるだろうか」といった不安感がともないます。
◇(3)嫉妬・妬み
生まれながらの経済的格差、容姿、自分が何度やってもうまくいかないものをコネクションでうまくいかせた……。
こういった「結局最初から持っている人にはかなわない」という虚しさは嫉妬や妬みと同居します。
◇(4)喪失感
大切な人との死別や離別、ペットとのお別れといった「喪失」の感情は虚しさにもっとも近い感情といえるでしょう。
お通夜やお葬式のときに涙がまったく出ないということがあります。喪失感情というのは心が虚無になってしまった状態で、喜怒哀楽すらも出てこないのです。
■「人生が虚しい」と感じたときの対処法
自分の人生に対して虚しいと感じたとき、どうしたらいいのでしょうか。対処法を考えてみました。
◇(1)目標を立てる
資格を取得する、○○を半年以内に達成する、毎日△△する、など目標を立てましょう。
達成感を積み重ねることは心の空白を埋めることになります。
ただしその際、学習性無力感に襲われないように最初の目標は無茶をしないこと。徐々に目標値を上げていくようにしてください。
◇(2)自分を犠牲にしない
よく「自分を犠牲にしない」というと自己中と勘違いして抵抗感を覚える方がいますが、両者は全然違います。
自己中とは自分が楽しければまわりは関係ないという精神で、自己犠牲はまわりが楽しいのなら自分はどうでもいい、という精神です。
自分の心や身体を犠牲にして他者に尽くしたり迎合したりしても必ずその後に虚しさがやってきます。
自分自身に優しくなれると人にも優しくしようという心が自発的に生まれるのです。
◇(3)刹那的なもので紛らわさない
虚しさを感じたときに、刹那的な享楽で紛らわさないことが大事です。
たとえばお酒を大量に飲酒して酩酊する、一緒にいてくれるなら誰とでもかまわずベッドをともにする、など。
その場は虚無感が消えますが、ひとりになったときに数倍の虚しさとなって返ってきます。
紛らわすということは悪いことではありません。ただ、紛らわすのであれば持続性があるものにしましょう。人間関係であっても同じです。継続的に付き合えるような関係性の人にしましょう。
「虚しい」という感情は誰の心にもある
冒頭でも説明したように、生きたいという欲求と無になりたいという欲求は並行して誰の心にもあるものです。
虚しいという感情は決して心地よい感情ではないため、ついそこから気を紛らわしたり適当なもので埋めたくなってしまいます。
しかし、この「ポッカリとした感じ」から逃げずに頑張って変化を興してみましょう。
自分が心地よく生きるために労力を使うこと。ゆっくりでも積み重ねる時間が心の空白を埋め、さらに成長につながります。
(小日向るり子)
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