思い描いていた未来とは違う。だけど… 大人の心に響くジェーン・スー最新エッセイ集 (2/2ページ)
と、その隣では小学生が同じようにアイスを物色していた。
買えるのはひとつと決まっているのだろう。私の財布には十個も二十個も買えるお金が入っているが、胃腸の心配をせずに済むであろう彼の方が、私よりずっと豊かに思えた。(p.207「空腹のかたち」より)
胃腸と打ち合わせをしながらスーさんは、一つのラクトアイスを選ぶ。そして、会計を済ませ、仕事場に戻り、席についてアイスを食べる。じんわりと空腹を満たすアイスに「ハレルヤ!」とスーさん。お腹が痛くなることもなかった。
そして次のようにつづるのだ。
食べたいものを買うのに、お金が足りなかった時代が懐かしい。食べたいものを、食べたいだけ食べられた時代も懐かしい。ということは、これも永遠ではないだろう。(p.208「空腹のかたち」より)
◇
他にも中年男性たちのダイエット、再結成したガンズ・アンド・ローゼズをめぐる想い、40代にとって「ちょうどいいパンツ」の話、結婚をしない選択をしてシングルマザーとして生きていくこと、炎上しないために必要な「話し方」のアップデート。
『これでもいいのだ』というタイトルの言葉はまるで魔法のようだ。かつての自分と今の自分、いずれも肯定することができる。かつての自分を否定するのは嫌だし、かつての自分や思い描いた未来と比較して今の自分を否定するのもやるせない。幸せは人それぞれであり、生活のかたちも人それぞれ。ないものねだりをやめて、変化を受け入れよう。
「本当にこれで良かったのか?」
「ちょっと違っているかもしれないけど、これでも良いのだ!」
そんなメッセージが、心にじんわりしみる。中年の心の奥底を代弁してくれるジェーン・スーさんのエッセイは、とても優しいのだ。
(金井元貴/新刊JP編集部)