これまで未発見。人間の脳で発生するシグナルが新たに発見される(ドイツ・ギリシャ共同研究)
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これほど科学技術が発達した現在に至っても、まだまだ人間の脳の仕組みは完全には解明されていない。
人間の脳でこれまで見たことのないユニークなシグナルが見つかった。人間の脳がこれまで考えられていた以上に強力な演算装置である可能性を示す発見だという。
ドイツとギリシャの研究グループによって明らかにされたのは、大脳皮質の細胞が発火する際に、通常のナトリウムイオンだけでなく、カルシウムも利用されていたということだ。
・人間の脳とコンピューターの類似点
人間の脳はコンピューターとよく比較される。もちろん完全に同じものではないが、あるレベルでは似たような仕組みで作業を行なっている。
たとえば、どちらも電圧を利用してさまざまな演算をこなしている。コンピューターの場合、これはトランジスタという、いわば信号機のある交差点を通したかなりシンプルな電子の流れとして行われている。
一方、神経細胞においてその流れは、開閉することでナトリウム、塩化物、カリウムといった電荷粒子を交換するチャネルの波である。この流れるイオンのパルスのことを「活動電位」という。
研究グループが「カルシウム媒介性樹状活動電位(calcium-mediated dendritic action potential)」と呼ぶ、プラスに帯電したイオンのコンビネーションは、個々の神経細胞がもうひとつの論理演算を行う手段になるとのことだ。

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・樹状突起――神経細胞の演算能力を決めるコア
フンボルト大学のマシュー・ラーカム氏に言わせれば、個々の神経細胞の演算能力を決めるコアの部分は、シグナルの送信を化学的に行う「樹状突起」という枝の末端部分だ。
樹状突起は神経の信号機のような役割を果たしており、流れてきたシグナルをそこで停止させたり、先に進めたりしている。シグナルがその先の神経細胞への伝達を許されるのは、活動電位が十分に高いときだ。
これが脳の論理演算の基盤となる。それらは集合的に伝えられる電圧の波紋で、「AND演算」(xかつyを満たしたときに伝えられるシグナル)と「OR演算」(xまたはyを満たしたときに伝えられるシグナル)の2種類がある。

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・これまで観察されたことのない電圧の波形
まだ議論の余地はあるだろうが、人間の中央神経系のシワのよった外側の部位、つまり「大脳皮質」ほど複雑な場所はないだろう。
より深いところにある第2層、第3層は特に分厚く、感覚、思考、運動制御といった高次機能に関連していると考えられている枝が密集している。
今回詳しく研究されたのは、これらの層の組織で、てんかん患者から外科手術で切除されたものが利用された。
実験では、細胞体樹状突起パッチクランプという装置で各神経細胞の活動電位を上下させ、そのときのシグナルが記録された。その結果、これまで観察されたことのない電圧の波形が生じたのだ。
脳腫瘍から採取したサンプルでも同様の結果が得られているので、この現象はてんかん患者特有のものではないようだ。
ラットでも同じような実験が行われたが、人間の細胞で観察されたものとはかなり異なっていたという。
だが、より重要なのは、細胞にナトリウム・チャネル阻害薬を投与してもなおシグナルが観察されたことだ。それを止めるにはカルシウムを阻害する必要があった。つまりカルシウムがこのシグナルを媒介しているということだ。

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・カルシウムが媒介する活動電位が示す可能性
カルシウムが媒介する活動電位が発見されただけでも興味深いことだが、その仕組みのモデルからは驚きの事実が明らかになっている。
AND演算とOR演算にくわえて、神経細胞はXOR演算(排他的論理和)を行うこともできそうだということだ。なんと脳はこれまで知られていなかった処理を行なっているのかもしれないのだ。
カルシウム媒介性樹状活動電位が神経細胞全体や生体の中でどのように機能しているのか理解するには、まだまだ研究が必要だという。
また人間だけでなく、他の動物にもこのような仕組みがあるのかどうかも今のところ不明だ。
これまで私たちの神経系がテクノロジー開発のヒントになってきたことを考えれば、今回明らかになった神経細胞のメカニズムは、新しいネットワーク・トランジスタ開発にもつながるかもしれないとのことだ。
この研究は『Science』(1月3日付)に掲載された。
References:Dendrite Activity May Boost Brain Processing Power | American Association for the Advancement of Science/ written by hiroching / edited by parumo
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