東京五輪の世界新を!「日の丸スポーツ用具」驚愕の技術力
開幕まで半年を切った世紀の祭典。熱き闘いを繰り広げる選手を支えるニッポンの開発力の秘密に迫った!
半年後に迫った東京五輪を前に、世界各国のスポーツ用品メーカーによる商品開発バトルが苛烈化している。昨年9月に行われた、東京五輪の代表選考レース「MGC(マラソングランドチャンピオンシップ)」では多くの選手がピンク色の厚底シューズをはいていたことが話題を集めた。しかも五輪出場権を得た4選手のうち、男子優勝の中村匠吾(27)、2位の服部勇馬(26)、女子2位の鈴木亜由子(28)と3選手が、その色鮮やかなシューズでゴールしたのだ。「あれはナイキの『ヴェイパーフライ』というシリーズのシューズ。カーボンファイバープレートが搭載されており、それがバネのような役割を果たすんです」(スポーツ紙記者)
一般的に、“ピンク厚底シューズ”などと呼ばれているが、「MGCの頃に新色のピンク系が出たのでピンクをはく選手が多かったんですが、実はグリーン系など他の色もあります」(前同)
今年の箱根駅伝でも大いに目立ったが、この靴の大流行の契機は、なんだったのか?「2017年以降、ケニアのリオ五輪金メダリストのエリウド・キプチョ(35)が、ヴェイパーフライをはき、驚異的なタイム(非公認も含む)を連発したことに端を発します」(同)
以後、その評判は長距離界にまたたく間に広がる。「18年の東京マラソンで設楽悠太(28)が16年ぶりに日本新記録を更新。その後のシカゴマラソンで大迫傑(28)が、それを塗り替えた。彼らもヴェイパーフライをはいていた」(同)
だが、ここにきて、“同シューズの使用が禁じられる可能性がある”との報道が出た。日清食品陸上競技部前監督の森田修一氏は、同シューズについてこう語る。「世界陸連としては、各メーカーが横並びで活躍して、すべての企業にスポンサードしてほしいと思っているので、ナイキの一極集中を問題視しています。その点で、この商品の取り扱いに困っているのが現状です。3月に裁定が出るようですが、五輪直前ですから、ちょっと遅いですね」
これに対して、選手側は複雑な思いのようだ。「選手たちは、価値ある製品を生み出す企業に寄り添い、その製品でベスト記録を出したいと思っているでしょう。禁止せずに東京五輪は世界記録ラッシュになってほしい。そのほうが楽しいですしね。五輪の後に、プレートの反発係数などの基準を出して、論議すればいいと思います」(前同)
また、ナイキの独占を許すまじと、アシックス、ミズノなどの日本のメーカーも、新次元厚底シューズの開発に取り組み、逆襲に虎視眈々だ。「正月の駅伝大会では、それをはいている選手もいました。特にアシックスは、世界のランニングシューズ市場で屈指のシェアを誇るだけに、意地を見せたいでしょう」(通信社記者)
そんな同社には、これまで輝かしい実績がある。その最大の功労者と言えるのが、三村仁司氏だ。「三村氏は、バルセロナ銀、アトランタ銅の有森裕子、シドニー金の高橋尚子、アテネ金の野口みずきと3人の五輪メダリストのシューズを作ってきた人物。さらに、野球のイチロー、サッカーの香川真司(30)、ボクシングの長谷川穂積ら各種目の世界レベルの選手たちの足をサポートし続けていたんです」(スポーツ誌記者)
三村氏はアシックスを定年退職後、自らのシューズ工房を設立。現在はニューバランスの専属アドバイザーを務めている。「先日、大阪国際女子マラソンで優勝し、東京五輪出場に近づいた松田瑞生(24)がはいていたのは、三村氏が手掛けたシューズでした。これは流行りの厚底ではありませんでした」(同)
東京五輪のマラソンで、新技術の日本製シューズによって2時間の壁を破る新記録もありえるか!?
■陸上短距離や競泳も
短距離の世界でも、シューズ革命が起きつつある。リオ五輪4×100メートルリレーの銀メダリスト・桐生祥秀(24)が、昨年の世界陸上で、日本製の革新的スパイクをはいて走ったのだ。「通常のスパイクの底面には金属製ピンが配置されています。しかし、“ピンが地面に刺さる感覚”をマイナス要素だとする声もあった。そこで、アシックスが、ピンのないスパイクの開発に着手したんです」(陸上関係者)
どのような構造なのか?「ファイバー素材などの複雑な突起のある靴底で、ピンがなくても高い推進力を確保します」(前同)
桐生だけではなく、アメリカの著名選手が国際大会で着用し、優勝という結果も出している。「新国立競技場で、日本発のピンなしスパイクが世界に、その性能をアピールする可能性もあります」(同)
陸上同様、0.01秒を争う競泳の世界では、スピードやアリーナ、ミズノなどのメーカーによる水着の開発競争が熾烈だ。「ドイツのメーカーで、日本ではデサントが独自に商品開発を行っているアリーナは、個人メドレーの金メダル候補・瀬戸大也(25)と協力して商品を作り出すなどもしています」(スポーツライター)
競泳水着といえば過去に、縫い目がなく特殊素材が用いられたスピードの『レーザー・レーサー』が一世を風靡したことがあった。「『レーザー・レーサー』に代表される“高速水着時に行われた北京五輪では、23の世界記録が更新されました」(前同)
その後、高速水着は禁止に。以来、自由形やバタフライでは、この時代の記録の更新は難しいとされた。「ところが、昨年の世界水泳で、男子200メートルバタフライでハンガリーのクリストフ・ミラーク(19)が、男子100メートルバタフライでアメリカのケーレブ・ドレッセル(23)が、高速水着時代のあのマイケル・フェルプスの記録を更新したんです」(同)
技術や練習環境などの進化もあるだろうが、水着も、規定の範疇で高速水着に追いつきつつあるのだ。
■日本の野球用具は海外でも高い評価
その他にも、東京五輪では日の丸用具が多く使われる予定だ。野球では大阪府に本社のあるSSKのボールが公式球として採用された。
「侍ジャパンのエース候補・千賀滉大(27)はグローブがゼットでスパイクがデサント、4番候補の鈴木誠(25)はアシックスの用具一式、守備の要となる菊池涼介(29)はミズノの用具一式を使用など、国産品の競演です。日本の野球用具は海外でも評価が高く、他国選手が使用する場面も見られるでしょう」(スポーツ店店員)
新潟に源流があるヨネックスのラケット類は、世界的に愛用者が多い。「同社は、漁業用の木製浮きを製造していた木工所がルーツ。60年以上前にバドミントンラケットの製造を始め、今は、ゴルフ、スノーボード、サッカーなどの分野に進出しています」(スポーツ業界紙記者)
バドミントンでは、男子シングルス世界ランキング1位の桃田賢斗(25)、2位で台湾(チャイニーズ・タイペイ)の周天成(30)をはじめ、世界各国の強豪選手が愛用している。
テニスでは、「アメリカの女子テニス界の偉人ビリー・ジーン・キングに売り込み、何度も門前払いされた苦い歴史も。その後、キングの信頼を勝ち得て、伊達公子らも愛用するようになりました」(前同)
さらに、東京でのメダル獲得が期待される大坂なおみ(22)とも契約している。「テニス、バドミントンラケットのフレームは、カーボン素材になっています。当社は、その分野を開発される東レさんなどと技術提携し、競合他社以上の製品開発に邁進しています」(ヨネックス広報担当者)
■卓球用具は「バタフライ」
卓球用具は、東京・杉並区にあるタマスのブランド「バタフライ」が海外でも大きなシェアを占める。水谷隼(30)、張本智和(16)の他、中国、ドイツ、台湾などの世界ランク上位の選手が使用している。「先代が自分でラケットとラバーを作り出して、当時の海外トップ選手に、“当社の製品を使ってほしい”と売り込んだのが最初です」(タマス広報担当者)
そのテクノロジーは、今も進化を続けている。「リオ五輪から、この4年の間でもラバーの質は向上していますね。ラケットもラバーも自社で製作して販売しているという強みを持っています」(前同)
卓球女子日本代表の伊藤美誠(19)が使用しているラケットも、日本企業のニッタク製だ。「今や卓球界では、日本製の用具がスタンダードになっていると言っていいでしょう」(卓球関係者)
投てき競技の用具もメイドインジャパンが大活躍。「投てき競技は、選手は自前の用具を投げるシステムではありません。砲丸投げなら、大会運営側が用意した複数の砲丸の中から、その場で選んで投げるんです。そのため、選手たちは少しでも使いやすい、精密な用具を選ぶんです」(前出の業界紙記者)
そして、五輪など主要国際大会では毎回、選択肢の中に、東京の江東区に本社を置くニシ・スポーツ製の砲丸、円盤、ハンマー、やりが含まれている。「同社の調査では、リオ五輪の砲丸投げで男女とも金銀銅のメダリストが、男子ハンマー投げでも金、銀のメダリストが同社の商品を選んだとか」(前同)
一方、国際バレーボール連盟の公式球になっているのが、広島の化学メーカー、ミカサのボールだ。「ミカサは、斬新なボール表面のパネルデザインを施し、飛行曲線が安定化するという新商品を開発しました」(同)
ニシ・スポーツ、タマス、ミカサと、いずれも企業規模は決して大きくないが、「それでいて、優れた製品開発が世界で評価され、トップアスリートに選ばれているというのが、実に誇らしいですね」(同)
東京五輪では、選手だけではなく、スポーツ用品開発の“日本代表”たちの戦いにも注目したい。