サガン鳥栖「Jリーグ開幕戦でわかった」2020チーム展望
サガン鳥栖 2020年チーム展望
<戦力評価> D
<今季の目標> J1残留
<補強分析> C
<戦術> C
<フロント力> E
2018年シーズンに続き、昨季も最終節までJ1残留を争う苦境に陥った。スポンサー撤退などの問題にも揺れる中、ピッチ内外での方針転換で生き残りを図る。
初めてJ1の舞台に立った2012年に5位になるなど、1ケタ順位で終えたシーズンは過去3度ある。だが2017年の8位を最後に、ここ2年はギリギリの戦いが続いた。
クラブの運営方針のぶれが、ピッチ内の混乱に直結してきた。年間5億円とも報じられてきたサイゲームスからのスポンサー料で急速にバブリーになった時期があり、ドイツ・ブンデスリーガで優勝経験のあるフェリックス・マガトを監督招へいに動き、実際に元スペイン代表フェルナンド・トーレスを迎え入れるにまで至った。
サイゲームスが撤退した2019年も、バルセロナでプレー経験のあるイサック・クエンカやスペイン人のルイス・カレーラス監督を迎えたが、結果にはつながらず。カレーラス監督は早々に退任となり、最終節も黒星を喫しながら他会場の結果によってようやくJ1残留を決めるというありさまだった。
今年も楽な状況ではない。2008年から胸スポンサーを務めてきたDHCが撤退した。袖スポンサーである佐賀新聞社が「当面の間」胸スポンサーとなることが発表されたのは、2月に入ってからのこと。クラブはこれまでの積極補強から、身の丈に合った経営とチーム運営へと舵を切らざるを得なかった。
鍵を握るのは、チームを2年連続でJ1残留に導いた金明輝監督だ。これまで2シーズンは、ともに監督交代を受けての途中登板だった。今季初めて、シーズン頭からチームを指導することができた。
シーズン途中で手渡されたチームを立て直すには守備から手をつけざるを得なかったが、今季は自分が思い描くサッカーを植え付けることができる。今季は前線からの積極的な守備など、攻守にわたってアグレッシブなサッカーを目指している。
ルヴァンカップ第1節は北海道コンサドーレ札幌相手に3失点して敗れたが、敵将ミハイロ・ペトロヴィッチ監督も認めたように、内容では鳥栖が上回っていた。リーグ開幕戦ではJ屈指の強豪である川崎フロンターレのホームに乗り込み、0-0で引き分けて勝ち点1を持ち帰ってきた。押され気味の展開を余儀なくされるが、あわやゴールという場面もつくり出していた。3失点したルヴァン杯から1週間後、失点をゼロに抑えた事実も見逃せない。
クラブの未来を握る若い選手たち
また、送り出したメンバーにも今季の方針がくっきり表れた。アンカーに入ったのは、18歳の松岡大起だった。下部組織のU-18に所属していた2018年から2種登録され、昨年3月には17歳ながらリーグ戦初先発でフル出場し、シーズン計23試合に出場。今季もここまでルヴァン杯、リーグ戦と先発起用されている。さらに、今季U-18から昇格したばかりの本田風智も、ここまでの公式戦2試合に先発。堂々たるプレーぶりで、育成型を目指すクラブの象徴となり得る可能性を感じさせた。
金明輝監督は鳥栖での引退の翌2012年、クラブのアカデミーで指導者への道を歩み始めた。前述の松岡は、アカデミー時代の教え子だ。
鳥栖のアカデミーは近年、躍進が目覚ましい。U-15は2017年に日本クラブユース選手権と高円宮杯全日本U-15選手権ともに初優勝を果たし、その年の2冠を獲得している。今年の高円宮杯でも準優勝したが、その鳥栖U-15は現在のトップチームと同じフォーメーションとチームとしての戦い方を共有していた。U-18は昨年、同年代最高峰のリーグであるプレミアリーグ昇格を果たしている。年代別の日本代表選手も輩出するなど、鳥栖は他のビッグクラブに負けない育成組織を擁するに至っている。
外部からの新戦力も悪くない。昨季のJ2で結果を残した小屋松知哉(←京都サンガS.C.)は、川崎F戦でもチャンスをつくり出していた。大卒ルーキー森下龍矢(←明治大学)も、即戦力として戦えることを感じさせた。この20代半ばに入ろうとする選手たちと10代の若い力が今季の、そして今後の鳥栖の運命を大きく左右しそうだ。
クエンカ(→ベガルタ仙台)、小野裕二(→ガンバ大阪)、高橋祐治(→柏レイソル)と、昨季の主力が抜けた穴を埋めるには至らない。だが、下部組織に集まった優秀な選手をトップへつなげていく流れを継続させるためにも、今季のJ1残留は非常に重要になってくる。
ピッチ上の成績が、クラブ全体の今後の命運を握る。過酷なタスクが、今季のチームには託されている。