魔法×ミステリ×ファンタジー 異色の小説が生まれた背景は? (2/3ページ)
ただ、今のようなミステリではなくて、当時は『ブレードランナー』に代表されるようなサイバーパンクが好きだったので、それに近いものを書いていましたね。
――ファンタジーとミステリの融合というと、他にもいくつかの作品が思い浮かびます。参考にされた作品やこの分野で好きな作品などありましたら教えていただきたいです。
蒲生:参考にしたということはないのですが、ラリー・ニーヴンの『魔法の国が消えていく』は好きですね。もうずいぶん前の小説ですが。S F的な作品なのですが、魔法の設定がすごくしっかりしていて、読者を白けさせない仕掛けがしてある小説です。
――魔法についての緻密な設計は蒲生さんの作品にも通じるところがありますね。表題作のほか「ホムンクルス事件」などもそうです。魔法をミステリの中に組み込むために留意した点がありましたら教えていただきたいです。
蒲生:「縛り」を作ることです。いくら魔法だからといっても「なんでもあり」にしてしまうと、ミステリとして成立しません。たとえば魔法が物理法則を無視したものになってしまうと読者がついてこられませんから、魔法を使う作品を書く一方で、自然科学と同列に扱われるようなものでないといけないとは考えていました。
――表題作の「魔法で人は殺せない」は魔法そのものというよりも「魔法陣」の作り方が肝になっている面白い作品でした。
蒲生:「バックファイヤー」という概念を作って、魔法を定められたルール通りに運用しないと大変なことが起こるという設定にしたんですよね。自分のかけた魔法が跳ね返ってくるという「バックファイヤー」はこの種の小説では新しい概念ではないかと思います。
―― 一見ライトノベル風に見えるのですが、中はすごくしっかり作り込まれています。「歌う猫」では、作中世界のディテールが会話などから垣間見えますが、表面的な設定ではなく深く世界を作り込んでいるように思えました。
蒲生:さらっと読めるのは大事ですが、それでも読んでくださった方の中に何か残るものがあればいいなと思っています。