今、格闘技界の賢者“世界のTK”が送る選手への助言とは

日刊大衆

今、格闘技界の賢者“世界のTK”が送る選手への助言とは

バナー題字・イラスト/寺田克也

 

 90年代から総合格闘技の最高峰UFCにレギュラー参戦し、“世界のTK”の異名を持つプロ格闘家の高阪剛

 この3月に50歳の大台に乗った今も現役ファイターとして闘う傍ら、2005年にオープンした自身が主宰する道場「アライアンス」で、長く後進の指導にも当たっている。

 現在、「アライアンス」は東京・赤坂の本部道場と、千葉県成田市のゴールドジム成田内でクラスを持つ成田道場の2カ所で活動中。赤坂の本部道場は、所属選手だけでなく、多くのプロファイターが出稽古にやってくることでも知られている。

 そんな現役と指導者両方の顔を持ち、ファイターが現在置かれている状況にも詳しい髙阪に、新型コロナウイルス感染が拡大する中での道場と選手の現状。そして、この局面における考えを聞いた。

 現在、赤坂本部道場、成田道場とも閉鎖されている「アライアンス」だが、4月7日に政府から緊急事態宣言が発令される前までは、本部道場のみオープンしていたという。

「行政の方針がハッキリと出るまでは、規模を縮小してジムは開けていたんですよ。成田の方はゴールドジムがすでに休館になっていたので、それにともない道場も閉めていたんですけど、赤坂の本部道場は幸い、窓を全開にできる構造なので、換気をしっかりとした上で、最低限のことをやっていた感じです。

 ただ、濃厚接触になるスパーリングは行わず、人と人との距離をしっかりと取った上での個人練習ですよね。またプロの練習は、週3回やっていたのを週1回に減らして、「練習の感覚を失わない」ことを主軸として有志だけでやっていました。自宅で自主練する人は、そうしてもらってね。

 それが4月に入って政府から緊急事態宣言が出され、東京都の方針も出されたので、その日から当面の間、本部道場もすべてクローズすることになりました。『今できる最大限の注意を払って生活をしていき、その次に格闘技のことを考えようよ』ということですね」

セコンドとして、的確なアドバイスと熱い檄を飛ばす セコンドとして、的確なアドバイスと熱い檄を飛ばす

■コロナ禍との向き合い方

 4月7日に緊急事態宣言が出されたあと、大半のジムが活動を自粛。格闘技の大会も4月21日に横浜アリーナで開催予定だった「RIZIN.22」を始め、ほぼすべての大会が中止、または延期となった。こんな満足に練習もできず、試合出場の予定も立たない状況下で、選手にとってもっとも大きな問題は、やはり経済面だという。

「この現状の中で、選手にとって試合へのモチベーションをどう保つかも重要ですけど、一番の問題はやはり生活をどうするかだと思うんですよね。

 若い選手たちは、アルバイトを含めた仕事をやりながら格闘技に打ち込んでる人が大半なんですけど。ほとんどの選手は格闘技に懸けているので、生活は最低限できるところで抑えて、あとの時間はすべて練習に使っていたはずなんですよ。でも、いまこの状態では仕事もままならず、その最低限が維持できない、ということが起こりつつあるんです」

 プロ格闘家の中で、ファイトマネーや試合にともなう収入で生活できるのは、ひと握り。多くの選手は、他に仕事を持ちながら練習に打ち込んでいるが、例えば飲食などのアルバイトは、仕事自体ができなくなっているケースも多いのだ。

「だから今は、まず生活することを考えた上で、あとは耐えて待つしかないと思うんですよ。いつまでもこの状態が続くわけではないと思うので、そこに懸けるしかないんですよね。これまで自分に無駄な出費がなかったかどうか、もう一度洗い直したりしながら、耐え忍ぶしかない。

 ただ、そういう生活の中でも、“格闘技”というものは忘れてほしくないですね。生活だったり、自分を維持することを最優先だけど、格闘技を頭から離れさせてほしくないな、というところはあって。耐え忍びながら、自分のできることをやる。それしかないですね」

弟子のひとり、藤井伸樹は修斗世界バンタム級8位にランクする 弟子のひとり、藤井伸樹は修斗世界バンタム級8位にランクする

 選手にとっては、極めて厳しい状況であることは変わらない。しかし髙阪は、けっして悲観してはいないという。それは格闘家という人種の特性と、備わった力を信じているからだ。

「こういう状況になってとくに思うのは、今こそ格闘家のメンタル、ものの見方と考え方がすごく大切になってくると思うんですよ。『今、何をすべきか』『自分は何をしなければいけないのか』をまずメインで考えて、それに対する行動を自分で起こすこと大事だと思いますね。

 未知のウイルスが世界的に蔓延して、あらゆる活動が制限されるようになるなんて、ほんの数カ月前まで誰も予想できなかったと思うんです。でも、これを試合に当てはめれば、予期せぬ事態や、自分にとって良くないことが起こるのが当たり前なのが、格闘技なんですよ。その起こったことに対して、瞬時に頭で考えて実行に移さないと、“勝ち”に結びつけることはできないんですね。

 だから、何か困難な状況に直面しても、すぐに自分の頭で考えて行動する、予期せぬ事態に対応できる能力が格闘家たちにあると自分は信じているので、この事態も選手ひとりひとりがしっかりと自分の今やるべきことを考え、乗り越えてくれると思っていますね。

 つらい状況だとは思うんですけど、“耐える力”というのも格闘家に備わっている力だと思うので、今は耐えるしかない。耐えたあとに何があるかを格闘技の練習の中で理解している人は、耐えられると思うんですよ。だから己を信じられるかどうかだと思います。

 そして、このコロナ禍のあとをしっかり見据えて日々をすごすことも大事です。これがある程度収束して、通常通りの日常が戻ってきたとき、ゼロからスタートするんじゃなく、スタートを切れる準備をできるだけしておく。そして溜まった鬱憤を、来るべき日に爆発させてほしいですよね」

(取材・文=堀江ガンツ)

高阪 剛 高阪 剛

高阪 剛/こうさか つよし
1970年、滋賀県生まれ。ALLIANCE(アライアンス)代表。総合格闘家。学生時代は柔道で実績を残し、リングスに入団。リングスでの活躍を機にアメリカに活動の拠点を移し、UFCに参戦を果たす。リングス活動休止後はDEEP、パンクラス、PRIDEで世界の強豪たちと鎬を削ってきた。格闘技界随一の理論派として知られ、解説・テレビ出演など様々なメディアでも活躍。
https://alliance-square.jp/ 堀江ガンツ/ほりえ がんつ
1973年、栃木県生まれ。『紙のプロレスRADICAL』編集部を経て、2010年よりフリーライターに。『KAMINOGE』を中心に、『Number』『BUBKA』ほか、各種プロレス・格闘技のムックや単行本など、数多くの媒体で執筆。近著に玉袋筋太郎、椎名基樹との共著『玉袋筋太郎のプロレスラーと飲ろうぜ』(白夜書房)がある。WOWOW『究極格闘技-UFC-』など、テレビ解説も務める。
Twitterアカウント:@horie_gantz
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