今、２０代で最も成長が楽しみな俳優の１人、山崎賢人（２５）。経歴を見ると、私が思っているよりも、デビューからの出演作品数が少なくて驚いた。勝手に「作品を選ばず出まくる」イメージを持っていたのだが、あくまでイメージだけだったようだ。

　理由は単純で、私が彼を初めて見たのがマンガの実写化だった２０１５年の映画『ヒロイン失格』。続けて１６年の『オオカミ少女と黒王子』。また、私は見てはいないが『四月は君の嘘』『一週間フレンズ。』と立て続けにマンガ実写化の主演をし、トドメに『ジョジョの奇妙な冒険　ダイヤモンドは砕けない　第一章』ときた。ツイッターの書き込みなどでも「また漫画の実写化？」という彼の感想を何度、目にしたことか。

　映画を見ても「きれいな顔」以上の感想は持たずに終わっていたのだが、あるドラマをきっかけに、「あれっ？　実はものすごく上手な人なんじゃないか？」と見る目が変わった。それが１７年のドラマ『陸王』（ＴＢＳ系）である。

　役所広司（６４）が演じる「こはぜ屋」社長の息子、大地役で、私はこのドラマの放送中、彼を「山崎賢人」と意識して見る回がなかった。それほど素直になじんでおり、彼のたたずまいがドラマの品を上げていた。ドラマ全体を通して、山崎賢人ってこんな自然に演技できる人なの？　と気づかされた感じだ。

　そして１８年の『グッド・ドクター』（フジテレビ系）でその気づきは確信に変わり、すっかりファンになった。『グッド・ドクター』は現在、コロナの影響で放送が延期になっている『アンサング・シンデレラ　病院薬剤師の処方箋』の代わりに再放送しているが、何度見ても毎回泣ける。

■美女よりもおっさん俳優

　さらにＡｍａｚｏｎプライムビデオでは、前述したマンガ実写化シリーズ『ヒロイン失格』『オオカミ少女と黒王子』『四月は君の嘘』『一週間フレンズ。』などが今のところ無料配信で楽しめるが、私のオススメは、１６年の第１３回本屋大賞で大賞に選ばれた小説の映画化『羊と鋼の森』である。静かで美しくて、染み入るような感動をくれる。

『陸王』では役所広司、『グッド・ドクター』では藤木直人（４７）や柄本明（７１）との共演にほのぼのでき、『羊と鋼の森』では三浦友和（６８）、鈴木亮平（３７）との絡みに、じんわりくる。おろしたてのコットンを思わせる山崎のすがすがしい魅力は、同世代の女優より、超実力派の渋いオッサン俳優と並んでこそ、輝くのかもしれない。

　重厚な人間ドラマでストーリーのカを握る役など、どんどん見てみたい。公開延期になっているが、又吉直樹（３９）原作、行定勲（５１）が監督した主演映画『劇場』も楽しみである。（田中稲）