生物の体を短時間できれいに透明化する技術が開発される(オーストリア研究) (1/3ページ)
イカの透明化 image by:TU Wien / Max Perutz Labs
体の組織をスケスケにしてしまえれば、解剖せずとも内臓や神経構造が観察できる。そんな生物学者の夢を実現したこの技術は、イカや魚、線虫やサンショウウオだってほぼ1日で透明にしてしまう。
ウィーン大学やウィーン医科大学をはじめとする研究チームが開発した「ディープクリア(DEEP-Clear)」という方法は、組織を洗浄しつつ、色素を除去することでさまざまな動物の体を見事透明にしてくれるそうだ。
・従来の観察技術の限界
生物学の分野では、内臓や組織を構成する個々の細胞の解析がますます重要視されるようになってきている。
従来の手法は、標本を薄っぺらくスライスして、それを分析し、そこから得られた情報を元に3Dモデルを作り出すというものだった。
なんとなく想像がつく通り、これは手間も時間もかかる作業である上に、しばしば不完全なモデルしか作り出せない。
というのも、たとえば神経細胞には全身に伸びるくらい長いものがあるが、これをスライスから再現するのは至難のワザであるからだ。
組織を透明にできれば、もっと楽に体内を調べられると考える科学者がいたのも当然だろう。
ディープクリアで透明にした上で、神経系にマーカーを施し、光シート撮像でイメージ化したものイカの透明化 image by:TU Wien / Max Perutz Labs
・複数の薬品の相乗効果で短期間で色素を除去し劣化を防ぐ
実は生物を透明化する技術はこれまでにもあった。だが、従来の技術ではなかなか除去できない色素がいくつもあり、そのために色素のない脳などの器官や一部の動物にしか使うことができなかった。