デキる社会人は使ってる【時候の挨拶】とは
書面で連絡する際には欠かせない「時候の挨拶」。
難しいもの、面倒なものだと苦手意識を持っている人も多いのではないでしょうか。
書き方やよくある例文を知っておくことで、手紙や改まったメールを送る場面で、きちんとした印象を与えることができます。
■時候の挨拶とは。どんなときに使うもの?
時候の挨拶とは、それぞれの季節や月の気候・行事を踏まえた挨拶で、手紙やメールの初めの部分に書きます。
対面で会話をするときも、「こんにちは、今日は暑いですね」のように会話を始めることがありますよね。
季節という共通の話題から始めることで、コミュニケーションの場を開くような機能があるのです。
時候の挨拶には、「陽春の候」「炎暑の候」のように、「熟語など一語」+「の候」という形もあれば、「毎日うっとうしい天気が続きます」のように、文として書く形もあります。
現在のビジネスシーンでは、書面や手紙での連絡、改まったメール連絡の冒頭部分において使われています。
以下は、実際に使われる具体的な例です。
◇(1)手紙で連絡するとき
お礼状を送ったり、重要な依頼をしたりする際、今でもあえて手書きの手紙の形で連絡することがあります。そのときは、時候の挨拶をはじめ、手紙の書式に従う必要があります。
◇(2)組織として書面で連絡するとき
組織としての通知・お礼・お詫びなどを、書面で作成することがあります。ここには時候の挨拶が入るのが一般的です。
◇(3)一斉メールを出すとき
着任の挨拶、退職の挨拶など、関係者に一斉に送付するメールがあります。目上の人を含め、さまざまな相手が含まれるメールですので、改まった書式で書くことが求められます。
◇(4)かしこまったメールを出すとき
仕事をお願いしたいと思い、専門家に初めて連絡を取るときなど、特に気を使うシチュエーションでは、時候の挨拶も含めた丁重な書式でメールする方が良いでしょう。
■時候の挨拶を使わない場合
時候の挨拶は必ず付けなくてはならないものではありません。むしろ、付けることで相手に違和感を抱かせてしまう場合もあります。時候の挨拶を使わないのは次のような状況です。
◇(1)社内の人とメールをやり取りするとき
時候の挨拶は改まったシチュエーションで求められるもので、社内のやり取りには適しません。
社内のメールでは、簡潔に用件を伝えることが要求されますので、「お疲れ様です、○○です」とシンプルな挨拶で始めれば十分です。
なお、社内の人が相手でも、わざわざ手紙を書いてお礼を伝える場合などには、時候の挨拶を付けるのが一般的です。
◇(2)何回もやり取りが続いているとき
顧客や取引先が相手でも、メールが何往復も続く場合には、時候の挨拶を省略します。毎回時候の挨拶を付けていては、むしろうっとうしく感じられます。
問い合わせ対応などで、何度もやり取りが続きそうな状況では、
(1)最初にこちらから連絡するときの冒頭部分 (2)最後に一区切りをつける際の締めくくり部分
に時候の挨拶が入っていれば十分です。
◇(3)LINEやビジネスチャットなどで連絡するとき
LINE、Slackなどのビジネス向けチャットなど、短い文でやり取りするのが基本の環境においては、時候の挨拶が入って長文になると、わずらわしく感じられます。用件のみを簡潔に伝えましょう。
◇(4)急ぎの謝罪をするとき
突然のトラブルなどで、相手に迷惑を掛けてしまう場合、まずメールで一報を入れることも多いかと思います。
そうした緊急の連絡には、時候の挨拶を付けている場合ではありません。悠長に挨拶せず、用件を早めに切り出すようにしましょう。
【急ぎの謝罪の例】
・会議に遅刻してしまう ・返答・納品などの期限を失念していて、今から対応する ・急遽予定が入り、打ち合わせの日程変更(リスケジュール)が必要になった
なお、謝罪に関しても、改まった書面で謝罪文を送る場合には、時候の挨拶を付けることも多いです。
■時候の挨拶を使った基本的な文章の流れ
時候の挨拶を使う場合、メールや文書全体の流れがどうなるか要点を押さえましょう。
◇基本の流れ
(1)最初の部分(前文)
頭語(「拝啓」など)+時候の挨拶+安否の挨拶
(2)本文(主文)
本題
(3)締めくくりの部分(末文)
結びの挨拶+結語(「敬具」など)+あれば追伸
※メールの場合には、「頭語」「結語」は書かないのが普通です。
◇例文1:依頼の手紙の場合
拝啓 風薫る五月になりました。山田様にはいかがお過ごしでしょうか。
さて、先日ご相談しておりました講演の件ですが……
(以下、用件の本文が続く)
急に暑くなりましたので、お体にはお気を付けください。 敬具
追伸 以前お世話になりました田中も、当日にお目にかかるのを心待ちにしております。
◇例文2:挨拶の一斉メールの場合
師走を迎え、皆さまいっそう慌ただしくお過ごしのことと存じます。
私事で恐縮ですが、今月末をもって退社することとなりました。
(以下、用件の本文が続く)
年の瀬もおしせまってまいりました。どうぞ良いお年をお迎えください。
■各月ごとの「時候の挨拶」の例文
時候の挨拶というだけあって、時候=それぞれの季節・時節の気候に合わせて書く必要があります。
せっかく時候の挨拶を入れたのに、季節外れのとんちんかんなことを書いてしまっては台無しですから、各時期の書き出しの挨拶、結びの挨拶の典型例を覚えておくと便利です。
組織として提示する書面などであれば、「○○の候」という漢語調の挨拶、個人として出す手紙やメールなら、柔らかい文体の挨拶がふさわしいでしょう。
なお、各月の上旬・中旬・下旬ごとに違う挨拶を入れる……と細かく定めているマナーの本もありますが、年によって、地域によって、暑さ・寒さなどの状況も違いますので、あくまで目安だと思ってください。
絶対の正解はなく、自分の思う季節感で書いても構わないものなのです。
以下は、各月ごとの時節の挨拶の例文です。月の中で時期ごとに書き出しの差が出るところは月の前半・後半に分けて提示します。
◇1月前半
☆書き出し
・初春の候 ・新春の候 ・○○様におかれましては、良いお年をお迎えになったことと存じます ・寒さが一段と厳しくなってまいりました
◇1月後半
☆書き出し
・大寒の候 ・厳寒の候 ・凍てつく寒さが身にしみるこの頃でございます ・雪の予報に気を揉む日々ですが、お変わりなくお過ごしでしょうか
☆1月の結び
・改めて本年も何卒よろしくお願い申し上げます ・寒さ厳しき折から、くれぐれもご自愛ください
◇2月前半(特に2/4前後の立春以降、それ以前は1月後半と同じ)
☆書き出し
・立春の候(2/4前後の立春以降) ・余寒の候 ・暦の上では春と申しますが、まだ寒い日々が続いております
◇2月後半
☆書き出し
・梅花の候 ・向春の候 ・公園に梅の花の見られる時期になりました ・少しずつ日の長くなるこの頃です
☆2月の結び
・まだ寒い日が続きますが、お風邪など召されませんよう
◇3月
☆書き出し
・早春の候 ・春暖の候 ・ようやく風も暖かくなってまいりました ・柔らかな春の光のうれしい季節となりました ・桜が待ち遠しいこの頃です
☆3月の結び
・朝夕冷え込みますので、お体にはお気を付けて ・年度末の慌ただしい時期ですが、ご無理なさいませんよう
◇4月
☆書き出し
・仲春の候 ・桜花の候 ※地域差に注意 ・すっかり春めいてまいりました ・こちらでは桜も見ごろを迎えております ・ゴールデンウィークも近づき、行楽のご予定もお決まりでしょうか
☆4月の結び
・快い季節、どうぞお健やかにお過ごしください ・新年度で何かとお忙しいことと存じますが、ご自愛ください
◇5月
☆書き出し
・新緑の候 ・薫風の候 ・風薫る快い季節となりました ・青葉が目にも鮮やかに映ります ・早くも夏の暑さを予感する日々が続いています
☆5月の結び
・まだ暑さに慣れない時期ですので、お体をおいといください
◇6月
☆書き出し
・入梅の候 ・長雨の候 ・うっとうしい天気が続いております ・紫陽花が雨に映える季節となりました ・梅雨明けの待ち遠しいこの頃
☆6月の結び
・随分蒸しますので、体調など崩されませんよう
◇7月
☆書き出し
・盛夏の候 ・炎暑の候 ・暑中お見舞い申し上げます ・例年以上の暑い日々が続いております ・雲もすっかり夏めく今日この頃
☆7月の結び
・暑さ厳しき折、どうぞご養生ください ・お互いに夏バテしてしまわないようにしたいですね
◇8月
☆書き出し
・酷暑の候(8/8前後の立秋の前まで) ・残暑の候(8/8前後の立秋以降) ・まだまだ暑い日々が続いております ・各所の花火大会を見かけるようになりました ・ようやく朝夕はしのぎやすくなりました
☆8月の結び
・暑さに体力も奪われるこの頃、くれぐれも御身お大切に
◇9月
☆書き出し
・初秋の候 ・秋色の候 ・いくらか過ごしやすい時期となりました ・コスモスが秋風に揺れる季節です ・虫の音が聞こえるようになってきました
☆9月の結び
・季節の変わり目です。お風邪など召されませんよう
◇10月
☆書き出し
・爽涼の候 ・清秋の候 ・金木犀の香りに心躍るこの頃です ・秋晴れが気持ちのいい季節ですね ・少しずつ秋も深まり、朝夕冷え込むようになりました
☆10月の結び
・思わぬ夜寒にお気を付けくださいませ
◇11月
☆書き出し
・晩秋の候 ・紅葉の候 ※地域差に注意 ・気付けば霜の降りる時期となりました ・紅葉が目に楽しいこの頃 ・すっかり冷え込むようになり、小春日和に喜びを感じます
☆11月の結び
・木枯らしの季節、温かくしてお過ごしください
◇12月前半
☆書き出し
・師走の候 ・寒冷の候 ・冷たい空気が身に染みるこの頃 ・街にはイルミネーションが見られるようになりました
◇12月後半
☆書き出し
・年の暮 ・年の瀬を迎え、いっそうお忙しいことと存じます ・年もおしせまり、何かと慌ただしいこの頃 ・あっという間に年も暮れようとしております
☆12月の結び
・本年中にぜひお目にかかりたいですね ・気ぜわしい時期ですが、どうぞご自愛ください ・どうぞよいお年をお迎えください ※下旬以降、その年最後のやり取りであることを入れても良い
■時候の挨拶を武器にして好印象のコミュニケーションを
時候の挨拶は難しく感じられるかもしれませんが、初めての相手などに改まった形式に沿って連絡をすることができると、好印象につながります。
また、使い慣れてくると、自分なりの文面も思い付くようになります。季節感のあるタイムリーな時候の挨拶ができると、相手との血の通ったコミュニケーションのきっかけにもなります。
「面倒くさいもの」ではなく「メールや手紙での武器になるもの」と捉え直し、楽しみながら身に付けてください。
(吉田裕子)
※画像はイメージです