羽生善治が平尾誠二との交流の中で気づいた「将棋とラグビーの共通点」 (2/2ページ)
そこに対局や試合の面白さ、難しさがあり、将棋とラグビーの共通点なのかなと思いますね」(p.181より)
ラグビーはチーム競技、将棋は個人での戦いという違いはあっても、個性や独創的なアイデアを大切にして、自分のいるフィールドに変革をもたらす2人の間にはシンパシーができていたのだろう。
■息子への言葉「親の死に目に会えると思うな。だから帰ってくるな」本書のラストを飾るのが、平尾の長男である平尾昂大さんへのインタビューだ。
昂大さんが子どもの頃にはすでに現役を引退していた平尾。しかし、指導者として仕事に練習にと家にいる時間も少なく、一緒に過ごす時間は短かったという。ただ、近くの公園でキャッチボールやバスケットのパスの練習などを楽しんでいたそうだ。
その後、昂大さんはアメリカに留学。父が病気だと分かると、頻繁に日本に帰るようになったが、死に目には会えなかったという。
10月12日、平尾の容体悪化の知らせを聞き、昂大さんが帰国。試験のために日本を離れなければいけない時間が迫る19日、父と握手を交わした。これはいつも別れ際の習わしだった。翌日、アメリカに着いて間もなく、平尾が亡くなったことを知る。
生前、「親の死に目に会えると思うな。だから帰ってくるな」と父から聞かされていたが、その言葉が現実になってしまった。「ありえないと思いました。死ぬなんて」という本音を、昂大さんは記者に打ち明ける。
◇
ほかにも山中伸弥氏をはじめ、元文部科学副大臣の鈴木寛氏、元プロテニスプレイヤーの沢松奈生子さん、そしてラグビー関係者まで11人のインタビューを通して、平尾の人生を追いかける本書から、常に「ラグビー界の未来」を作ろうとし続けていた彼の生き様や信念を感じることができるだろう。
ただ、著者が「平尾さんがどんな人だったかと問われると、答えに窮してしまう。いまだに定まった人物像を持てないでいる」(p.302より)とつづっているように、様々な顔を持ち合わせてもいたようだ。
「ミスター・ラグビー」平尾誠二とは一体どんな人物だったか。それはこの本を読んだ読書個々人の中で導き出してほしい。
(新刊JP編集部)