「ミスター・デンジャー」松永光弘が明かす飲食店危機の乗り越え方 (2/2ページ)
この事態を予想し、輸入肉を買いだめしていたが、キープできるのは数ヶ月分。時間稼ぎはできても、いずれは輸入禁止の影響を受けるのは予想できる状態だったという。
ステーキ屋であれだけ儲かったのは、アメリカからの輸入肉が安かったから。その肉の価格が高騰したら、利幅は大幅に減ってしまう。アメリカからの輸入牛に代わる肉はオーストラリア産。けれど、オーストラリア産の牛肉は、当時それまでの仕入れ値の3倍に高騰していた。ギリギリまで粘るも、デンジャーステーキの値上げをすることを松永氏は決断する。
「シレッと値上げしてもこれはダメだな」と考えた松永氏が、大威張りで値上げを告知する方法を考えた結果編み出したのが、「自虐広告」だった。「音(値)上げ宣言」と大書きされたタペストリーに「牛肉高騰に音を上げて…恐縮ながら値を上げました」のキャッチとともに「お安く見やがって!」と怒る牛に松永氏が踏みつけられるイラストが描かれている。
このタペストリーは、思いがけなく「バズる」ことになった。常連のウケも良く、店の前を通りがかった若い女性たちが写真を撮り、SNSで「こんなバカな看板がある」と拡散したことで、新規客獲得につながったのだ。
さらに、松永氏は狂牛病騒動を乗り越えるべく、次々と策を仕掛けていく。格安で入手していた肉の部位の入手が難しくなり、今までのボリュームを維持できなくなると、さらに安い部位の肉を仕入れ、今まで以上に手間暇をかけ、これまでと同じくらいに柔らかさを再現。加えて、「再値下げ」を実施。1980円だったセットメニューを2300円に値上げしていたが、2000円に値下げ。収益は下がるが、お客さんが離れていくことを阻止した。
狂牛病騒動の経験から、すぐに「こうしよう!」と決断し、実行に移すことの大事さを松永氏は学んだという。「どうしよう、どうしよう」と迷っていたら、同業者に先を越されてしまう。状況をよく見て、即断即決することが大切なのだ。
(T・N/新刊JP編集部)