武力を使わず侵略する 日本国防の弱点を突いた「最悪のシナリオ」 (2/2ページ)
この事態が「外国からの侵略」であることはまちがいない。しかし、ただちに自衛隊を出動させることは悪手だ。
実力行使をしていない相手に対して、「島民の救出」という目的で自衛隊が武力を用いれば、戦闘の引き金を引いたのは自衛隊、ということになる。そもそも、島に紛れ込み、生活の中に溶け込んだ精鋭部隊の兵士をどうやって見分け、攻撃するというのか。万が一、島民を誤って殺害してしまったら、日本の国土で外国との戦闘が起こり、国民が犠牲になったということだ。どんなに強固な政権でも吹き飛ぶだろう。
さらに、半島は日本の混乱を煽る一手を下す。数百万人規模の自国民を船に乗せ、難民として日本に送り込んだのである。
「国防」と「自衛隊」。
これらは日本国民の間で意見の相違が大きいトピックだ。「右派」と呼ばれる人々が国防の強化を説けば、「左派」と呼ばれる人々は「軍国主義への回帰だ」と非難し、「右派」は「左派」を「平和ボケ」していると非難する。両者の間には埋めがたい断絶がある。
そして「難民」もデリケートな問題だ。対処を間違えば国際的なバッシングを受けることになる。北朝鮮は、普段は目に見えない日本社会の分断と、世論形成の特徴を理解したうえで、日本の空中分解を試み、混乱に乗じて日本を乗っ取ろうと画策していたのだ。
この事態に対して、日本政府は奇妙な反撃に出る。
粛々と島民たちを船に乗せ、全住民を退避させることにしたのである。北の部隊がそれを阻止するのであれば「住民に危害を加えない」という約束は噓だったことになる。紳士的な侵略者たちの化けの皮が剝がれた後であれば、自衛隊を出動させても世論は一定の理解を示すだろう。もちろん、無抵抗に島民を明け渡すなら、それはそれで結構。日本政府は北の部隊を試したのである。では、その作戦についての北朝鮮側の反応は・・・?
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この作品は日本の国防体制へのジャーナリストとして国防の裏を知り尽くした著者からの厳しいダメ出しでもある。不安定化する世界で起こりうる「悪のシナリオ」は、スリリングであるとともに、背筋が凍るような冷徹さも備えている。
(新刊JP編集部)