アニメ「鬼滅の刃」でブームのチャンス!?竈門炭治郎の職業「炭焼き」ってどんな仕事?

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アニメ「鬼滅の刃」でブームのチャンス!?竈門炭治郎の職業「炭焼き」ってどんな仕事?

2016年から連載され、アニメ化や映画化など大ヒットしている漫画『鬼滅の刃』。主人公の竈門炭治郎(かまど たんじろう)は炭焼きを生業としています。

昔、地元の里山文化について話をしていたところ、こんなやりとりがありました。

炭焼き小屋。

「炭焼きって、材木に火をつけておけば勝手に出来るんじゃないの?」

「……いやいや、それじゃただの消し炭になって、火がつかないよ」

「そもそも木を焼いたのが炭なのに、その炭をさらに焼くってどういうこと?」

そこで今回は、炭焼きについて紹介したいと思います。

木伐り3年、窯作り10年……そして一生かけて極める炭焼き修行

単なる消し炭と燃料となる木炭の大きな違いは、前者が完全に燃え切った(酸化)状態に対して、後者は燃焼のポテンシャルを高めている点(炭化)にあります。

火とつきっきりの、厳しい仕事。

具体的には、酸素の供給を最小限に抑えて高温&酸欠状態で燃焼させるのですが、よく燃える炭を作るためには熟練の技が必要で、業界では「木伐り3年、窯作り10年、炭焼き一生」と言うそうです。

山を自由自在に歩き、よい炭になる原木を目利きして伐(き)り出せるようになるのが3年、炭を焼くための窯(かま、かまど)作りに10年……これは窯そのものを造るだけではなく、伐り出した原木がほどよく燃えるように詰め並べるコツを言います。

そしていざ炭焼き。酸素の供給を最小限に抑える関係で、燃焼中の様子はほとんど見ることが出来ません。焼き過ぎればスカスカになってしまうし、焼きが甘ければこれまたダメ……原木のコンディションを見極めた上で焼きを加減するのは、勘と経験の勝負となります。

更に火を消す時も、竈門(窯の入り口)を塞いでじっくりと消すパターンと、逆に新鮮な空気を入れて一気に過熱、固く締めてから消し粉を満遍なくかけて急速に消すパターンとで、炭の仕上がりが変わるそうです。

前者はホームセンターなどでよく見る黒炭(こくたん、くろずみ)、後者は「備長炭」でも有名な白炭(はくたん、しろずみ)となり、白炭は消し粉の灰で白くなるためそう呼ばれ、見た目も音も金属っぽい特徴があります。

備長炭。白炭の特徴がよく分かる。Wikipedia(撮影:STRONGlk7氏)より。

ざっとこれらのスキルを一生涯かけて磨いていくことになるのですが、Wikipediaによれば炭治郎は、物語の開始時点で13歳(終了時点で15歳)、10歳から炭焼き修行を始めていたとして、木伐りがようやく一人前になったところだったのでしょうか。

終わりに

また、炭焼きは単に燃料供給だけでなく、自然環境を保護する観点からも大切な日本文化と言えます。

木炭の原木には色々ありますが、その多くは楢(ナラ)や樫(カシ)、椚(クヌギ)と言った広葉樹で、こうした樹木を育てて伐るサイクルを保つ(要するに山を手入れする)ことで山林の植生が活性化。

針葉樹に比べて広く深く根を張るので保水力が高く、洪水や山崩れを防ぐばかりか、動物たちの餌となる木の実も多くならすため、昨今問題となっている野生動物の出没も低減。更にはスギのような花粉も少ないため、花粉症の軽減にも寄与します。

自然と共生してきた、日本の里山文化。

とかく「木を伐らず、そのままにしておく事こそ自然保護なのだ」と主張される方もいますが、完全な原生林ならともかく、古くから人々が利用してきた里山は、人間社会との適切な距離感によって共存してきたのです。

いつか「鬼滅の刃」ブームが去っても、炭焼きをはじめ日本の里山文化を継承する産業が継承され、自然と共生できる持続可能な社会を望みます。

※参考:
東京燃料林産株式会社

※参考文献:
原伸介『ボクは炭焼き職人になった-怒涛の独立編』新風舎、2004年8月
原伸介『ボクは炭焼き職人になった-修羅場の修行編』新風舎、2004年8月
虫明功臣 監修『ダムと緑のダム 狂暴化する水災害に挑む流域マネジメント』日経BP、2019年12月
宮澤正義『クマは警告する』ほおずき書籍、1999年3月

日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan

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