髭男爵山田ルイ53世インタビュー(4)「娘がいまハマってる漫画は『ガラスの仮面』です」
10月21日に双葉社から新刊『パパが貴族』を上梓した、お笑いコンビ髭男爵の山田ルイ53世。本人によれば、本作は子育てエッセイではなく、娘に正体がバレまいとする日々を描いた防衛記録だという。スパイさながらのスリリングな、深すぎる思考に迫るインタビュー
ーー「普段から、自宅で執筆作業をすることも多かったので、コロナ禍でもあまり生活が変わらなかった」という話をしていましたが、子どもと接し方が変わったことはありましたか?
「仕事はリモート、学校は休校と親も子供も家にずっといる状況で、本来なら、“逆に、お互いを見つめ直す良い機会になった”とか“絆が強くなった”みたいな話をしないと駄目なんでしょうが、僕の場合、それが奥さんだろうが子供達だろうが、子どもからしたらお父さんであろうがお母さんであろうが、そして奥さんからしたら、旦那であろうが子供であろうが、単純に“一緒にいたくないな……”って時があると思うんですね? そういうのをもっと気軽に発信出来た方が良いと思う」
ーーずっと一緒にいると、やっぱり?
「しんどいですよ。正体を隠してるとか関係なしに、単純に子どもとずっと一緒にいるってしんどいですよ。“もう嫌!”って思ったこと何回かありましたもん。元々1人が好きな方ですし」
■「“家族=無条件に仲良く暮らせる”ではありません」
ーー「外出自粛で共同時間が増えて、家庭内不和が増えてしまった」という報道がありました。そこまで行かなくても、やはりああいう感じに?
「当然だと思いますよ。そうなると思います。 “家族だから無条件に仲良く暮らせるんだ”ってことはないわけですから。ちょっとコロナ禍のときはこの社会は絆を強めようとしすぎましたね。繋がろうとしすぎた。それが“善”っていうかいいことみたいにみんな言い過ぎたし、否定して叩かれるのも怖いから否定しなかった。異論を言わなかったのが僕はよくなかったと思っています」
ーーやはり一人でいる時間も必要?
「特に芸能人とか、表に出る人があんまりそういうことを言う勇気がなかったんだと思います。もう一色になってしまったから……。そのしんどさもあると思うんですよね」
ーーコロナで繋がろうとしすぎた、という話もそうですけど、単純に物事を一本化したくない?
「そういうところがあるかもしれないですね。たとえば不倫した人間をみんなで一斉に叩く、というのもそうかもしれないですけど。人間って、いろんな部分でできてるから。不倫したけど、ある局面ではめっちゃ誠実な人とか。一つのこと全部を否定するのも肯定するのも気味が悪い話だと思いますけどね。そもそも関係ないんだから。自分には」
■「その厳しい目を、自分自身の人生に向ける勇気はあるの?」
ーー最近、芸能界の不倫騒動は本当にいろいろありましたからね。
「それこそ以前テレビで言わせてもらいましたが、
その厳しい目を自分自身の人生に向ける勇気があるのかと」
ーー娘さんも、やっぱりSNSとか注意しなきゃいけない時代になりましたよね。
「そうですね。本当にもっと学校とかで授業としてやった方がいいと思いますけどね。SNSみたいなものがイヤな感じで使われて人間関係が煮詰まっていくのって、学校はまさにそういう場所なんですから。教育をした方がいいと思います」
ーーちなみに、娘さんが「芸能界に入りたい!」と言い出したら? 二世タレントも珍しくないですし。
「ウチの娘に関しては、“芸人になる”って言い出したらどうなんですかね。それこそ僕の書いた『一発屋芸人列伝』の“髭男爵の章”を読ませます。これだけしんどい、そううまくは行かないってことを。それを踏まえたうえでなりたいなら、止めはしないです。ただキャラ芸人は止めとけと。喋り一本の正統派でお願いしたい」
ーーなるほど。
■「娘には漫画家になってほしいですね(笑)」
「僕は漫画家さんになってほしいですね。漫画家には夢がありますよ。女流漫画家で、15歳くらいからデビューしていただいて。担当編集さんと結婚することだけは阻止して(笑)」
ーー娘さんは、マンガが好き?
「(遊びで)連載持ってますよ(笑)。いまは絵本とかも描いてますね」
ーーちなみに好きなマンガは?
「ここ最近は、『ガラスの仮面』を。僕が全巻、出てる分は買ったので」
ーー渋い! 王道中の王道じゃないですか。
「そしたら、ずっと読んでて。娘の口からまさか『劇団一角獣』ってワードが出てくるとは思わなかった。“あれやな、飛んだり跳ねたりが得意な。身体を使ったパフォーマンスがスゴイな”とか、娘とそういう話ができるのはびっくりですよ。もちろん、『クレヨンしんちゃん』も読ませてもらってます」
ーーありがとうございます(笑)。
「防衛記録」としているが、やはり子育てエッセイとしての側面も強く感じさせる含蓄のあるトークをしてくれた。スリリングで哀愁を感じながらも、どこか温かい『パパが貴族』のいろいろな素顔が明らかとなったインタビューだったーー。