伊藤衆人監督が語る「ユニット曲PVの自由度の高さ」乃木坂46ユニットの魅力を語ろう!
乃木坂46のユニット曲PVにいろいろな仕掛けをしてくる監督と言えば伊藤衆人監督。思わず考察したり、PVに隠された小ネタを探すのが楽しいと言う人も少なくないはず。数々の偉大な? ユニット曲のPVを世に送り出してきた伊藤衆人監督に大人数の楽曲にはないユニット曲の自由度の高さについて語ってもらった。
――松村さんや2期生の個人PVは撮っていましたが、MVはさゆりんご軍団の『白米様』が最初なんですよね。
そもそもアイドルのMVが初めてだったので、どうやって撮ればいいのか分からなかったんです。ただ、事務所の方から「好きなことをしてください」と言われたので、あえて「アイドルのMV」を勉強せずに個人PVと同じノリで撮りました。佐々木さんが天国と地獄の旗を上げるシーンだって個人PVでやろうと思っていたアイデアですから。
――『白米様』を観返すことはありますか?
よく観返しますよ。最初にして最強というか、セオリーを無視してるのにまとまっているので、いまは「『白米様』を超えなきゃいけない」と思いながら乃木坂46のMVを撮ってます。
――『意外BREAK』(衛藤美彩、白石麻衣、高山一実、松村沙友理)は「こういうテーマで撮ってほしい」という指定はあったんですか?「ドライブ」というテーマを出されたんですけど、4人が免許を持ってないから公道を運転できなかったので、ゴーカート場にしたんです。それと、衛藤さんがデコトラと撮ったグラビアを見て「つなぎを着てほしい」と。
――マリオカートやミニ四駆の要素もあって。
そこは個人PVのノリですね。白石さんがゴーカートに向かって歩いていくところを上から映す、『AKIRA』のようなシーンも撮ったんですけど、つながりが悪かったのでカットしました(笑)。
――最後に思わせぶりなシーンがあります。
みなさんが考えているほどではないんですけど、白石さんがトップを走って寂しそうな顔をするシーンも含めて、卒業するメンバーが増えてきたことは反映しました。
――すでに個人PVを撮っていたさゆりんご軍団と違って、最初はそれぞれのキャラクターが分からなかったと思います。
めっちゃ調べました。僕は映画監督と違って「これを撮りたい」というのがないので、歌詞と曲に加えて、彼女たちの中にあるものをヒントにしたいんです。MV制作前は乃木坂46が出ている雑誌を読みまくっています。
――アイドルのMVにとってキャラや関係性は重要だと思います。
そこはセンターが大きな意味を持つアンダー曲や期別曲のほうがより考慮しています。そのメンバーが“いま”センターに立っている理由を描いたほうがいいと思うので。あとから観ても意味が出るじゃないですか。一方で、ユニットは“いま”を超えたいという想いで撮っています。それと、大人数だと何をやっても乃木坂46になるけど、ユニットはそうじゃないので、「乃木坂46っぽくないほうがいい」と自由にやらせていただいています。
――若様軍団の『失恋お掃除人』は、さゆりんご軍団、真夏さんリスペクト軍団のMVを意識したそうですが。「あの2つを超えなきゃいけない」と必死に考えた結果、刑事ドラマのパロディになりました。演技派の若月さんと当時は演技経験が少なかった3人でドラマをやりたいという狙いがあったんです。
――そこに阪口さんの「画伯」や山下さんの「ジャスティス」も入れて。
3期生が入って1年も経っていなかったので、「紹介」してあげたほうがいいと思ったんです。最初に名前をしっかり出したのも「紹介」のためでした。
――エヴァンゲリオンじゃなくて市川崑を意識したテロップで。
そうです。そうです。
■シンプルに見えて奥が深い
――『のような存在。』(白石、飛鳥)はシンプルに見えて奥が深い作品でした。
単純に「白石さんのメガネ姿」と「飛鳥さんのバラエティ仕様じゃない男装」を見たいというところから始まったんです。ユニットのMVはビジュアルから入ることが多いかもしれません。
――設定はSFチックで、想像が広がりました。
同じ設定で流れを10パターン考えていたんですけど、ひとつを選ぶんじゃなくて、全部を混ぜてどの方向でも話が進むようにしました。白石さんがロボットにも見えるし、飛鳥さんの妄想かもしれないし、人類が外に出られない世界かもしれない。正解がないんです。
――現在の状況だと「人類が外に出られない世界」に見えるし、時代によっても見方が変わるかもしれません。
最近観返してそう思いましたね。
――2期生曲の『アナスターシャ』が筆頭ですが、意図してない部分までファンの方が考察していることはどう思いますか?「小ネタを入れたいから」じゃなくて、話の流れとして「こうなるだろう」と自然にやっているんです。だけど、ファンの方の考察には感心しているし、何よりネタを引き寄せるメンバーがすごいなと思っています。「引き寄せの法則」じゃないけど(笑)。
(EX大衆2020年12月号「乃木坂46ユニットの魅力を語ろう!」伊藤衆人) 取材・文●大貫真之介
●いとう しゅうと 12月27日生まれ、北海道出身。CMディレクター・映像監督。乃木坂46では数々のユニット曲のほかに、2期生研究生時代の個人PV、『ブランコ』『トキトキメキメキ』『図書室の君へ』『アナスターシャ』などの楽曲PVも手掛ける。