オスを必要とせずメスだけで子供を産む「単為生殖」の不思議
自然界では一般的な単為生殖の謎に迫る image by:Brown/Smithsonian’s National Zoo
スミソニアン国立動物公園で生まれたアジアン・ウォータードラゴンの卵を見て飼育係は驚いた。なぜなら卵を産んだメスはオスに出会ったことがなかったからだ。遺伝子検査の結果、2016年8月24日に孵化した子供は、オスなしで生まれたことが確認された。
このようにメスだけで子供を作ることを「単為生殖」という。
なんだか聖母マリアが処女懐胎でキリストを産んだという話が思い出されるが、自然界ではかなり一般的な現象で、植物・昆虫・魚・は虫類、さらには鳥まで、さまざまな種で確認されている。
ただし、ほ乳類は例外だ。ほ乳類が出産するには、精子が持つ特定の遺伝子が必要なので、どうしてもオスが必要になる。
・メスの卵子に必要な遺伝子がすべてそろっている生物がいる
2つの個体で全ゲノムに及ぶDNAの交換をする「有性生殖」の場合、メスとオスが持つ卵子と精子それぞれに含まれる遺伝物質のどちらも、子供の形成に貢献している。
動物の大半はこの有性生殖によって子孫を残すのだが、種によっては、メスの卵子に子供を残すために必要な遺伝物質すべてがそろっているようなものもいる。
たとえばカリバチ、甲殻類、トカゲの一部の種は、単為生殖によってしか子孫を残さない。
一方で、単為生殖をするほとんどの生物は、普段は有性生殖で子供を作るのに、ときおりオスなしでも子供を産んでしまう。ある意味で、より奇妙な話かもしれない。

単為生殖をするオオミジンコ image by:istock
・単為生殖のプロセス
単為生殖で子供が生まれるには、一連の細胞プロセスがつつがなく進行しなければならない。
まず精子に刺激されることなく、卵細胞が形成(卵形成)される必要がある。次に、卵子が自力で発達をはじめ、初期の胚が形成されなければならない。そこからさらに発達が続いて、ようやく最後に孵化となる。
どの段階もすぐにダメになってしまう。染色体が倍になったときに、子供が発達するために必須である遺伝子が完全にそろっていなければならない2番目の段階は特にそうだ。
もう1つ別のプロセスとして、卵子が作られる過程で余った細胞(極体)によって、卵子がフェイク受精することもある。いずれの方法でも、胚の発達によって、母と子の遺伝レベルでの最終的な類似性が決まる。
Reproducing Without A Male | Parthenogenesis
・何が単為生殖の引き金となるのか?
何が引き金となって単為生殖が起きるのかは、まだ完全には解明されていない。しかし、どうも環境の変化と関係があるようだ。
たとえばアブラムシのような有性生殖と単為生殖のどちらもできる生物は、密集状態や捕食者といったストレスが、単為生殖から有性生殖(この逆はない)に切り替えるスイッチである可能性がある。
また淡水に潜むプランクトンの仲間は、塩分濃度の高さがそのスイッチになっているという。
・単為生殖で生まれた子供の性別
面白いことに、単為生殖を行う性質は遺伝するものであるらしく、単為生殖で生まれたメスの場合、やはり単為生殖で子供を産む可能性が高くなるのだという。
ちなみに単為生殖で生まれた子供の性別は、その種の性別が決まるメカニズムにしたがっている。たとえば一部の昆虫・魚・は虫類は、染色体がXXならメス、XYならオスだ。この場合、母親は自分が持つ遺伝子しか子供に伝えらないので、必ずメスになる。
一方、ヘビや鳥のように、メスがZW染色体を持つ生物の場合、子供は大抵がオス(ZZ)で、メス(WW)になる確率はずっと低い。
DNA analysis was used to validate evidence for facultative parthenogenesis (where a female reproduced asexually) in a green anaconda at Ueno Zoo, Japan! https://t.co/ykeH7sbE45 #2018MMM pic.twitter.com/NbjlKl0UyX
— Melissa A. Wilson (@sexchrlab) March 22, 2018
・オス抜きで子供を作るメリット
オスがいるのにあえてメスだけで子供を作ってしまうメリットの1つは、メスが自分の手で交尾相手を作り出せることだという。
米アリゾナ州のフェニックス動物園で1997~99年にかけて飼育されていたナミヘビの仲間は、2匹のオスを産み、その子は大人にまで成長した。もし母親が自分の子供と交尾をしていれば、近親交配になったところだ。
これは遺伝的にさまざまな問題を引き起こすが、進化の視点から見れば、子供がまったくいないよりはマシだ。このように単為生殖によってオスを産む能力は、自然界では無性生殖が想像よりもずっと一般的なものである可能性を示唆している。
・単為生殖のはかなさ
ただし単為生殖で生まれる種は、病気や寄生虫、生息環境の変化といったものですぐに絶滅してしまうことが観察されている。単為生殖によって近親交配する種は、そのおかげで進化のタイムラインが短くなっているかもしれない。
なぜ有性生殖と単為生殖の両方を行う種がいるのか? そうした種はたまに有性生殖をするだけでずっと生存していられるのか? これが単為生殖の研究者が目下関心を持っているテーマであるそうだ。
References:Virgin births from parthenogenesis: How females from some species can reproduce without males/ written by hiroching / edited by parumo