木南晴夏「パン好き女優」が推す老舗純喫茶の大ボリュームサンドイッチ
アイドル食堂・第55回 アメリカン

■パン好きが高じて本まで出版
アイドルだってメシを食う。自分も歳を取ったのだろうか。昔はアイドル路線だったタレントが女優として脱皮を重ね、今も第一線で活躍しているのを見ると、我が事のように嬉しい。きっと食がバイタリティの源なのでは――と当人に探りを入れたくもなる。が、自分で動かずとも、女優のほうで本まで書いてくれ、源がまるわかりという例が木南晴夏だ。
木南はパン好きが高じ、昨年3月には講談社から『キナミトパンノホン』を上梓した。これがAmazonで65件もレビューが付き、しかも☆4つ半という高得点。ぼくもB級グルメ本を数冊出しているが、評判はそれぞれに悪くないのに、うち半分は赤字だった。あやかりたい……。まぁ、彼女はそこまでのパン食いだったわけだ。
同書の紹介文を修正・捕捉しつつ引用すると……彼女は「パンシェルジュ検定2級を持ち、雑誌『おとなの週末』では約5年間にわたりパンの連載「キナミトパン」を執筆。2018年に催された『木南晴夏の渋BREAD』(@西武渋谷店)では、3万人以上を動員。テレビ番組では、NHK-BSプレミアム『パン旅。』が6シーズン目に突入するなど、パンの仕事も精力的に行っている」んだとか。
同書も「連載から厳選回を収録」という体裁のようだ。撮影は川島小鳥。女子が大好きな売れっ子フォトグラファーだ。「パン屋さんでの等身大の姿が見られる」のも売りらしいし、彼女ってすごく同性の観客・視聴者に好かれてるんだね。
美人すぎないし、演じるのはいつもヒロインの親友役的ポジション。悪役も難なくこなすが、嫌われないギリギリのところで、上手く可愛げも見せる。だから、二番手キャストで長く活躍を続けられるのかと、妙に納得した。今日び一番手でも、同性の支持は欠かせないが……。
そもそも木南は01年、「ホリプロ NEW STAR AUDITION 〜21世紀のリカちゃんはあなた!!〜」でグランプリを受賞している。かのタレント・スカウト・キャラバン(TSC)とは別枠の、アイドルオーディションの勝者だ。ホリプロはTSC以外のコンテストもいくつか主催してきたが、タカラトミーのリカちゃんとコラボした、この催しは単発に終わった。
女優としての着実な仕事ぶりもだが、18年には玉木宏と結婚。昨年には第1子も授かった。まさに順風満帆である。しかし、パン好きのタレントは数多いるが、なぜ本を出すまで熱中するのか。昨年6月の朝日新聞のサイト「好書好日」のインタビューではこう語っている。
「母がパン工場からパンを配達する仕事をしていたことが大きかったと思います。母にいつも付いていっていたため、焼きたてのパンを工場のおじさんに分けてもらうこともありましたし、朝食は決まってパンでした。ですから、パンを好きになるのは自然でした」
パン屋巡りに目覚めたのは、事務所の寮を出た、成人を迎える少し前だったというが、それでもずいぶん年季が入っている。「甘すぎず、むぎゅっと噛みしめるとほんのり感じられるくらいの甘さ」の食パンが特に“推し”なのだとか。
■極厚サンドは一度の食事で食べきれないほどのボリューム
『キナミトパンノホン』を繙くと、自分も行った店、評判は耳にする店、たくさん並んでいるが、中でも納得したのが東銀座の喫茶アメリカン。まさにむぎゅっとした噛み応えの、分厚い食パンを約1斤分使った、超弩級のサンドイッチを提供する老舗だ。晴夏は19年5月18日放送の『人生最高のレストラン』(TBS系)では、同店のタマゴとチキンサンドを、昨年3月11日に出演した『ZIP!』(日本テレビ系)でもタマゴサンドを紹介している。
彼女はこの手のサンドイッチを「わんぱくサンド」と命名。トーストしないアメリカンのサンドをNo.1認定して曰く、「食パンを味わうためのサンドイッチといっても過言ではないくらい、食パンが主役なんですよ」。
近くには歌舞伎座があり、アメリカンのサンドイッチは歌舞伎役者たちの御用達メニューでもある。現にぼくはついこの間、その後に控えた、歌舞伎役者への取材前、久々に立ち寄ってみた。彼も楽屋でよく食べると、番組の出演記録で確認したからだが、実は店内に入ったのは初めて。それまではテイクアウトを利用してきた。
だから、店内に入ってびっくり。極彩色のまさにアメリカンな装飾を埋め尽くさんばかりに、芸能人の色紙が貼られている。昼時のテイクアウトは行列が絶えず、時間を外して行けば、だいぶディスカウントされているが、残るサンドは限られている。だが、ちょうど12時過ぎに入店しても、店の中はさほど混んでいなかった。
店内では飲み物の注文が必須で、サンド類と同額で600円と高いが、冬場にテイクアウトしても、表で食べるには風も冷たい。それに卓上でないと、あの極厚サンドと格闘するには不利なのだ。具材がぼろぼろとこぼれ落ちてしまう。
また店内オーダーだと、テイクアウトのように組み合わせ商品がない。あのタマゴは確かに美味だが、チキンならなんとか全量食べられるだろうとオーダー。ところが、噛みつこうとすれば、細かく割かれ、マヨネーズで和えられた鶏肉が、小馬鹿にするように雪崩を打つ。シャリシャリのカットりんごがパンから躍り出る。
旨いんだけど、闘いだ。大体において、なにが挟まっていようと、一度に1斤のパンの完食は無理だ。悪戦苦闘するぼくも見て、すかさずママが持ち帰り容器を持ってくる。周囲はよくよく女性客が大半だが、当たり前のように半斤分は持ち帰る。潔く自分も従った。
そして、この「かなりのド迫力のインパクトある」(木南談)サンドイッチの残りをバッグに押し込み、取材に向かった。今、思い出しても腹が膨れてくる。彼女に取材する機会があればぜひ訊きたい。「あなたは1回で全量食べられるのか?」と……。
(取材・文=鈴木隆祐)