長嶋茂雄、プロ1年目のシーズン回顧「金田正一が恐れた男」 (2/2ページ)
「内角に投げた真っすぐをよけようとして、偶然バットに当たっただけのこと。まあ、長嶋一人を抑えたところで、ワシの給料は上がりませんけどね」
試合後、金田はこう言って貫禄の違いを見せつけた。実際、勝負は長嶋の完敗だった。よほど悔しかったのだろう。長嶋はその夜、眼がさえて眠れず、夜中にムクリと起き上がると、ビュッ、ビュッと暗闇でバットを振ったという。
■金田が恐れた長嶋の実力
翌6日の国鉄とのダブルヘッダーの第1戦でも、8回に金田がリリーフとして登場した。長嶋はリベンジのチャンスだったが、金田の外角に沈むシュートに、またしても空振り。試合後、金田はこう、うそぶいた。
「シュートなんか投げるもんか。真っすぐや」
長嶋ごとき、ストレートだけで抑えられると言いたかったのだろう。
長嶋が初めて金田からヒットを放ったのは、開幕から13試合目の4月19日のことだった。この日の第4打席、長嶋は金田の初球のストレートを振り抜き、レフト前に運んだが、試合後のインタビューでは、うれしさよりも、悔しさをにじませている。
「金田さんのカーブを打とうとして、2打席目から上半身を少し前に出してみたけど、うまくいかなかった。あのカーブを打ちこなすようにならなければダメだ……」
六大学のスターだったゴールデンルーキーに、プロの洗礼を与えた金田。しかし、実際は長嶋を警戒していたという。
「3月25日のオープン戦で、長嶋は大毎のエース・小野正一からホームランを打っているんです。金田は偶然、この中継をそば屋のテレビで見ていたんですが、中継でアナウンサーが、“これなら金田も打てるはずです”と実況。これに発奮したんですよ」(当時を知る球界関係者)
後年、金田はこう語っている。「実は、あの年はオープン戦で、さっぱり調子が上がらなかったんや。でも、シゲの登場で闘志に火がついたというかね。開幕したら、絶好調になった(笑)」
また、長嶋の印象に関しても親しい関係者に、こう明かしていたという。「ボールになる球でも、ムキになって振ってきおった。その気迫とスイングの速さは見事。いつか、やられる日がくるかもしれんな……」
1月25日発売の『週刊大衆』2月8日号では、王貞治のプロ1年目の試合の数々も紹介している。