謎の暗黒物質「ダークマター」の質量の範囲を絞り込むことに成功
ダークマターの質量の範囲を計測 credit:NASA/Hubble Heritage Team/STScI/AURA
暗黒物質(ダークマター)は、天文学的現象を説明するために考えだされた「質量は持つが、光学的に直接観測できない」とされる仮説上の物質だ。間接的にその存在を示唆する観測事実は増えているものの、その正体は未だ謎に包まれている。
だが、少なくともその質量の上限と下限については、ぐっと絞り込まれたようだ。
この結果と既存の宇宙理論を踏まえると、極端なまでに軽いものも、極端なまでに重いものも、ダークマター候補としては考えにくいそうだ。
・宇宙最大級のミステリー「暗黒物質(ダークマター)」
暗黒物質(ダークマター)は宇宙最大の謎の1つだ。
それは肉眼ではもちろん見えないし、人間の目では捉えられない波長によっても検出することができない。暗黒(ダーク)と呼ばれるのは、光学的に観察不能であるゆえのことだ。
だが、宇宙の観測からは、その存在を示す重力の影響が確認されている。
たとえば銀河の回転速度は、ダークマターの存在を仮定しなければ説明することができない。その重力がなければ、ずっと遅いものであるはずだからだ。
また大質量天体の重量が時空を曲げることで形成される重力レンズもやはり、ダークマターがなければずっと弱いものになるはずだ。
暗黒物質とダークエネルギーって何?
・観測不能でありながら、宇宙にあまねく存在する
このようにダークマターは、それが他の天体に与えている重力の影響からしか、その存在を知ることができない。
だが珍しいものというわけではない。それどころか、その重力の影響から、宇宙の全質量のほぼ80%がダークマターと推定されている。
この宇宙にあまねく存在していると考えられるのに、決して直接的には観察できない。宇宙最大級のミステリーにふさわしい物質だろう。

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・量子重力からダークマターの質量の範囲を特定
英サセックス大学の研究グループは、それが重力と干渉することに着目し、量子重力からダークマターの”粒子”が持つであろう質量の範囲の特定を試みた。
研究グループによると、仮にダークマター粒子の質量にばらつきがあるのだとしても、量子重力からその範囲を絞り込むことができるのだという。
マクロの世界の動きを正確に予測する一般相対性理論とミクロの世界の動きを正確に予測する量子力学は、なぜだか折り合いが悪いことで知られているが、統合されれば両者の基本的な原理を反映した理論になるはずだ。
ならば重力と干渉するダークマター粒子は、量子重力のルールにしたがって崩壊し、相互作用するに違いない。
明らかになった範囲すべてを丁寧に吟味して、既存の宇宙理論の下ではおよそあり得ないだろうと考えられる質量を除外していく。
その結果、ダークマター粒子の質量は、そのスピンならびに相互作用の性質次第で、10^-3から10^7電子ボルトの範囲に収まるだろうと推定された。
これまで推定値は、10^-24電子ボルト~10^19ギガ電子ボルトだったので、それよりもぐっと範囲が絞り込まれたことになる。
また、これによって「WIMP」をはじめとする、いくつかのダークマター候補をほぼ除外できるようになったのも大きな進展だ。

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・もし未知の力が発見されれば更なる謎が解ける
こうした新しい知見は、ダークマターを見つけるために探すべき場所や方法を絞り込むヒントにもなるという。
将来的に、今回除外された候補がまたもダークマター候補に返り咲くようなことが絶対にないわけではないようだ。
しかし、それは現代宇宙理論にまだ知られていない未知の力が発見されたときだという。それはそれで非常に楽しみな展開ではある。
この研究は『via=ihub" target="_blank" title=""Physics Letters B』(1月13日付)に掲載された。
References:sussex / via=ihub" target="_blank" title=""sciencedirect/ written by hiroching / edited by parumo
追記:(2021/1/31)本文を一部訂正して再送します。