乃木坂46個人PVの「アイドルの虚実混交」を秋元真夏「タイムトラベラー」に見ると?【乃木坂46「個人PVという実験場」第17回1/5】

日刊大衆

※画像は乃木坂46『帰り道は遠回りしたくなる(TYPE-D)(Blu-ray Disc付)(特典なし)』より
※画像は乃木坂46『帰り道は遠回りしたくなる(TYPE-D)(Blu-ray Disc付)(特典なし)』より

乃木坂46「個人PVという実験場」

第17回 ドキュメンタリーとアイドルの間 1/5

■「君の名は希望」MVと「超能力研究部の3人」の関係

 前週に取り上げた乃木坂46初期の代表曲『君の名は希望』のMV(https://taishu.jp/articles/-/92698)は、乃木坂46メンバーがオーディションを受けるさまを記録した、ドキュメンタリー調の映像を主体に構成されていた。そしてこのオーディションで選出された秋元真夏生田絵梨花橋本奈々未の3人は、同MVを演出した山下敦弘が監督を務める映画『超能力研究部の3人』(2014年)に主演することになる。

https://www.youtube.com/watch?v=rYhyP59Z53c
(※映画『超能力研究部の3人』予告編)

『君の名は希望』MVは、オーディションの記録映像的な体裁をとりつつも、ある瞬間、それまでの映像からややシームレスにワンカットの楽曲パフォーマンスシーンに入り、やがて楽曲が終わると再度ドキュメンタリー調の構成に帰着する、不可思議なバランスを持っていた。映画『超能力研究部の3人』は、そのようなドキュメンタリー的瞬間と「演じられる」瞬間とを、さらに混交させた作品になっている。

 当初、大橋裕之のマンガ『シティライツ』収録のエピソードを原作にした劇映画として企画された『超能力研究部の3人』は、最終的にいまおかしんじ脚本の劇映画パートと、その劇映画のメイキング映像の体裁をとったフェイクドキュメンタリーパートとをかけ合わせた手法で仕上げられることになった。そして、そのフェイクドキュメンタリーの中に、どこまでが「フェイク」であり「リアル」であるのか判然としない奇妙な瞬間が混在する、特有の手ざわりが生み出されている。

 もとより山下敦弘は、このような虚構性とドキュメンタリー性の交錯に自覚的な作家であり、『超能力研究部の3人』が持つ構造も、そうした山下らしい資質があらわれた作品といえるだろう。

 ただしまた、フィクションとリアルのあわいを抽出することは芸能において、特にスターシステムを旨とするタイプのジャンルにあっては、普遍的に受け手の興味を喚起するものであり続けている。“虚実皮膜”という言葉で時折説明されるのも、芸能のそうした性質である。

 本連載が主題としている乃木坂46の個人PVも、フィクションとして何かが「演じられる」水準と、アイドル・乃木坂46の一員としてのその人自身を映し出す水準とが交錯するような作品を数多く生み出してきた。これまで取り上げてきた個人PVの中にもしばしば、虚実皮膜に自覚的な作品は登場している。

 ここからはあらためて、それら「アイドル」であることを軸にした虚実の混交が描かれる作品をいくつか捉えつつ、そこから浮かび上がるものをみていきたい。

■秋元真夏「タイムトラベラー」の構造

 先の『超能力研究部の3人』のメインキャストの一人・秋元真夏が主演した2018年の個人PV「タイムトラベラー」(シングル『帰り道は遠回りしたくなる』収録)はまさに、『超能力研究部~』と同じく、秋元が明確なフィクションと「乃木坂46の秋元真夏」自身との双方を演じてみせる構造を持っている。

https://www.youtube.com/watch?v=b17o2O1ITi4
(※秋元真夏個人PV「タイムトラベラー」予告編)

 この個人PVを監督するのは山田篤宏。山田の作品群については本連載で昨年7月に扱っている(https://taishu.jp/articles/-/80897)が、トリッキーな構造を駆使しながら、見る者を煙に巻くような独特のスタイルを持つ作家であった。そして本作「タイムトラベラー」は、「映像作家が乃木坂46の個人PVの監督を依頼される」ところから物語を始める、明快にメタ的な設定を用いたドラマ作品になっている。

 このドラマでは、個人PVを依頼されたものの作品のアイデアが思いつかない映像作家(小平伸一郎)が、姪の夏子(秋元)からの助言をヒントにスランプを打開していくさまが描かれる。彼が依頼されているのは、他ならぬ「秋元真夏の個人PV」の監督である。

 やがて映像の位相が変わり、この映像作家が監督した(という設定の)「秋元真夏の個人PV」が始まる。ごくストレートに「アイドル・秋元真夏」の魅力を引き出そうと企図された(という設定の)この「秋元真夏の個人PV」では、丁寧にも彼女が「変に演技をしていない」ことがわざわざ謳われ、多くの人々がイメージするであろうアイドル的な振る舞いをする秋元が映し出される。

 もちろん、秋元がここで「演技をしていない」わけでは当然ない。しかし、「乃木坂46の秋元真夏」がナチュラルに表現されるこの映像中で、彼女が演じる「秋元真夏」とはどのような水準にいる人物なのか、その答えはシンプルではない。入り組んだ構造の妙を感じさせる山田篤宏らしいこの個人PVは、アイドルの虚と実の狭間を遊んでみせるような、独特のタッチの作品になった。

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