アレルギーや自己免疫疾患の治療に役立つたんぱく質が発見される
iStock
今年も容赦のない花粉の襲来に苦しんでいる人はたくさんいるだろう。粘膜をムズムズと刺激する花粉アレルギーから、命を脅かすようなアナフィラキシー反応まで、本来私たちを守ってくれるはずの免疫機能が一つボタンをかけ間違うと、とにかくひどいことになる。
人間の身体には、体内に入ってきた異物を認識し、攻撃して排除するための機能「免疫」が備わっている。ところが、この免疫機能が不具合を起こすと、まったく無害な自分自身の細胞や組織を攻撃してしまい、身体に様々な症状が出てくる。これがアレルギーであり、自己免疫疾患だ。
これまで、免疫の暴走を止めるための治療法と言えばステロイドや免疫抑制薬が一般的だったが、新たなる方法でこの疾患を治療できるかもしれないという。
免疫細胞が作り出すタンパク質「ニューリチン」が、有害な抗体を作り出す形質細胞の形成を抑制してくれるらしいのだ。
・免疫のブレーキメカニズム
人体はじつに良くできたもので、外部から侵入してくる敵を攻撃する免疫系の中には、それが過剰になりすぎないように抑えるブレーキ役もきちんと存在する。
それが「制御性T細胞」だ。自らを攻撃するようになった抗体や、アレルギーの原因になるヒスタミンを放出する抗体「免疫グロブリンE(IgE)」を抑制してくれることで知られている。
オーストラリア国立大学の免疫学者ポーラ・ゴンサレス=フィゲロア氏らの研究によって明らかになったのは、これまで詳しく知られていなかったその抑制メカニズムだ。
鍵を握るのが、「濾胞性制御性T細胞(Tfr)」という特殊な制御性T細胞だ。これが今回の主役であるニューリチンを作り出すと、IgEの産生が停止するほか、自分自身を狙う形質細胞を放出させるその他のプロセスが抑制されるのである。

iStock
・マウス実験で効果を確認
実験として、遺伝子を改変してニューリチンを作れないマウスを作り、これに卵から抽出したアルブミンを注射したところ、アナフィラキシー反応で死ぬ確率が高まることが判明したという。
また、こうしたマウスでは、生後初期の段階で、欠陥のある形質細胞が増加することも確認されている。これらは自己抗原を発達させる細胞だ。
しかし、こうしたマウスにニューリチンを注射したところ、目覚ましいほど健康になったという。これによって形質細胞に変化するB細胞も消失したそうだ。

iStock
・免疫を抑制しない自己免疫疾患の治療へ
ただし、こうした免疫のプロセス全体や、ニューリチンの他の細胞に対する効果のすべてが解明されたわけではない。
今回の研究では、それを調べるために、人間の血液とへんとう腺から白血球を採取して分析してみたところ、ニューリチンが内部で作用しているらしいことを示す手がかりが得られたとのこと。
こうした研究を通じてニューリチンが免疫系にはたす役割の理解が進めば、大切な免疫を弱める必要のない自己免疫疾患の治療が開発されるかもしれないそうだ。
この研究は『Cell』(3月11日付)に掲載された。
References:New natural answers for killer allergies - ANU/ written by hiroching / edited by parumo