弥生男子は絶倫男子!?『魏志倭人伝』『後漢書倭伝』に見る生命力みなぎる古代の食生活
中国の歴史書に記された「ハーレム日本」?
古墳時代よりも以前の日本の様子は、文字での記録は残っていません。かろうじて中国の歴史書を通して、当時の様子を垣間見ることができる程度です。
その中でも最も有名なのは、やはり『魏志倭人伝』でしょう。正確には『三国志』「魏志」の「東夷伝」の中の「倭人の条」ということになりますが、これには今から一八〇〇年ほど前にあたる後期弥生時代の、邪馬台国が盛んだったころのことが書いてあります。
さて、その中で興味深い記述があります。当時の日本人について「其人寿老、或百年、或八九十年」とあり、八十~百歳まで長生きしていたというのです。
また、さらに興味を引く内容として、「大人はみな四、五婦、下戸もあるいは二、三婦。婦人は淫せず、やきもちも焼かない」というのがあります。
どうやら邪馬台国の日本人は、身分の高いものは妻を四~五人、また下層階級の者でも二~三人の妻を持つ者が少なくないというのです。
今の時代から見れば、ハーレムですね。
これら本当だったとすれば、弥生時代の日本人の健康長寿ぶりには驚かされます。当時の日本人はそんなに生命力にあふれていたのでしょうか? 弥生時代の男性は揃いも揃って絶倫だったのでしょうか?
この秘密を解き明かす重要なヒントは、実は、先に書いた中国の歴史書に書いてありました。
「野菜と魚介類」が支えた生命力とバイタリティ当時の「倭人」すなわち日本人が長寿である理由について、文献には以下のように書かれています。
まず『魏志倭人伝』には、「倭地温暖、冬夏食生菜」。
次に『後漢書倭伝』には、「気温暖、冬夏生菜茹」。
いずれも同じような内容で、「倭の国は気候が温暖で、冬も夏も野菜があって茹でて食べている」とのことです。
現代でも、野菜の摂取量と寿命の長さが比例することはよく知られています。野菜は不老長生には欠かせない食べ物です。
しかも当時の人が食べる野菜はどれも「旬」のものだったはずです。新鮮な野菜には活性酸素の毒性を追い払い、体細胞の酸化やガンの発生、老化などを抑制するはたらきがあります。
また、おそらく当時は、調理法の選択肢は多くなかったでしょうから、人々は野菜を簡単に茹でて食べていたと思われます。
栄養的な面から考えてみると、調理法がシンプルな方が栄養も効率的に摂取することができます。ビタミンCやビタミンEを始めとするビタミン類、カロチン、カリウムなどのミネラル、繊維質などを、当時の日本人はたっぷり摂取していたのです。
さらに、貝類をよく食べていたという事実も見逃せません。
『魏志倭人伝』には「倭人は、海に潜って魚貝類を捕らえる」という記述がありますし、邪馬台国と同時代と見られる佐賀県の吉野ヶ里遺跡から出土したカキの殻は、人の頭ほどの大きさでした。
特にカキについて言えば、これには男性の精子の原料であり、精力を強化する上で欠かせないアミノ酸の一種・アルギニンが多く含まれています。
このように、強力な自然のパワーを新鮮な野菜や海産物から摂取することで、邪馬台国の人々は健康長寿を維持していたのでしょう。また、男性はそのバイタリティを食物から得て、一夫多妻制を支えていたのです。
不老長寿に精力増進……。いずれも、弥生時代から数千年が経った今でも、人間にとって永遠のテーマです。しかし知ってか知らずか、弥生人はすでにその答えを見つけていたようです。健康や体づくり全般に言えますが、バランスの取れた食生活に勝るものはないのかも知れませんね。
参考資料
永山久夫『イラスト版たべもの日本史』(1998年・河出書房新社)
日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan

