これぞ悪党の美学?『徒然草』が伝える鎌倉時代の刈田狼藉に、吉田兼好も苦笑い (2/3ページ)
何てことをするんだ」
田の持ち主が抗議すると、手下らは反論した。
「どこであろうと、他人の田んぼを勝手に刈り取ってよい理屈などあるものか。そもそも無茶苦茶な命令なんだから、俺たちも滅茶苦茶に従うまでさ」
……まったく、じつに筋の通った屁理屈だこと。
「それっ、どんどん刈っちまえ!」稲を刈り取る悪党たち(イメージ)。
僻事(ひがごと)とは、僻みを動機におこなうことで、少なくとも善行ではない悪事、ここでは「八つ当たりで他人の田んぼを勝手に刈り取る」行為を指します。
刈田狼藉(かりたろうぜき)と呼ばれたこの行為は、今回の件以外にも知行権(ちぎょうけん。領有権)の主張や食糧の収奪、あるいは単なる嫌がらせなどの目的で多く見られ、世が乱れると兵糧の現地調達として盛んに行われました。
(※)ただし、必ずしも犯罪とされた訳ではなく、実施者の主張が認められれば正当な収穫行為とされましたが、今回の場合は「訴訟に負けた腹いせ」という前提があるため、僻事と断定されています。
また、罷(まか)るとは「理不尽がまかり通る」「まかり越してござる」などと言うように、本来ありえない、あるべきでないことがあってしまうことを指しますから、「僻事せんとて罷る者」とは「百も承知で悪事をはたらこうとする者」となります。