井上小百合個人PVと、乃木坂46MVが描いた「虚構」の東京の姿【乃木坂46「個人PVという実験場」第18回4/6】 (3/3ページ)
https://www.youtube.com/watch?v=dvF5g1rvt-c
(※「Wilderness world」MV)
同MVは、2019年に栃木県足利市に建設され、その後スタジオとして存続している「渋谷スクランブル交差点」のオープンセットを用いて撮影された。
精巧に作られた道路面とCG再現による建物部分とによって、非常にリアルな渋谷の街並みでありつつ、一方できわめてアンリアルなレベルで、メンバー以外の人物や車両など人々の息遣いを感じさせる諸要素が排された画を実現している。また、MV後半ではそのように漂白されたスクランブル交差点をネオンカラーで彩り、さらに虚構のレベルを上げてみせる。
もとより、アーティストを現実の渋谷の街並みとともに撮影する作品は、それこそ枚挙に暇がない。それら諸作品に映る渋谷とは、1970年代以降に開発が進行し、広告やメディアによって幻想を託された街並みである。
そうした性格を帯びている渋谷はこの数十年来、「ヴァーチャル」な街として表象され論評されてもきた。「Wilderness world」MVではそのような議論とはまったく違う意味で、文字通りの「ヴァーチャル」な渋谷が採用され、「アーティストと渋谷」というごくポピュラーなマッチングを疑似的に描出している。