人材育成は「指導者の変革」から始まる スペイン・ビジャレアル流育成術 (2/2ページ)

新刊JP

そうして「選手のあるべき姿」の定義を、実に10か月かけて言語化していったという。

■自分の指導を内省することで初めて分かったこと

この指導改革は抜本的なものだったようだ。たとえば、自分たちの指導を振り返ろうという目的のもと、コーチにウエラブルカメラとピンマイクをつけて記録をする。こうして撮影された映像をみながら、コーチ同士で互いに指摘をし合う。ここから自分たちのリフレクション(内省)が進み、多くのコーチが自分の指導を見直していった。

佐伯氏は、自分自身の指導を振り返り、自分が思っていたことと違うアクションをとった選手に対して、ほぼ何も考えずに声かけをしていたと述べる。つまり意図なくメッセージを発信していたという。

「そんなことに気付かないまま、長年指導してきたことに気づかされるたびに、顔から火が出るような思いでした」(p.39より引用)と佐伯氏。
そこから指導のやり方は変わっていく。メンタルコーチのサポートを受けながら、冷静に見直していくような作業を続ける。そして、自分の言動を振り返る習慣が生まれ、発する言葉を意識して選ぶようになったり、選択肢を増やすようになったり、自然に言葉の仕分けをするようになったという。

■ビジネス、教育…「指導」にあるところに本書あり

指導は自分自身を見直すことから始まる。この方法はビジネスや家庭における私たちにも通じることだろう。

指導というと、「こういう声かけをすべきだ」「こういう言葉でモチベーションを高める」といった方法論が先行してしまいがちだが、そこに自分を振り返る作業はない。自分はどんな意図をもってその言葉を発していたのか、もっと突き詰めれば自分の指導の「クセ」を知ることがまずスタートなのではないか。自分を振り返ることの大切さを本書ではまず教えてくれる。

さらに、本書ではどんな風に選手たちを育成しているのか、そのメソッドが紹介されている。「問いかけ」の大切さであったり、フィードバックの仕方、そして「何も言わない」「教えない」というメソッド最大の特徴など、「目から鱗」とも言えるような内容が詰まっている。

そこにあるのは指導の本質であり、その前提としてまずは指導する側の意識が変わらなければ、同じことの繰り返しになってしまう。指導者として相手にしっかりと向き合っているか、相手のことを知ろうと努力しているか、相手が必要としているものは何なのか分かっているか…。

サッカーでの選手育成に留まらず、「教育」全体に広げて読むことができる一冊だ。

(金井元貴/新刊JP編集部)

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