逆賊とされた蘇我入鹿を祀る神社が奈良橿原にあった!旅で見つけた隠れ歴史スポット【前編】
旅や歴史についての執筆が多い筆者が、取材などの途中で見つけた隠れた歴史スポットを紹介します。
飛鳥時代の最高権力者でありながら、天皇家に対する逆賊として、大化の改新(乙巳の変)で討たれた蘇我入鹿。その入鹿を祭神とする全国唯一の神社である橿原市(奈良県)の入鹿神社を取り上げます。
まずは【前編】で、蘇我入鹿とはどのような人物かを紹介しましょう。この記事が、少しでも皆さんの歴史探訪の旅の参考になれば幸いです。
全国で唯一、蘇我入鹿を祭神とする入鹿神社。(写真:T.TAKANO)
大化の改新で討たれた蘇我入鹿
大化の改新(乙巳の変)で中大兄皇子らに斬首される蘇我入鹿。(写真:Wikipedia)
入鹿神社をご紹介する前に、その祭神である蘇我入鹿についてお話をさせていただきましょう。
入鹿を語る時、「645」という数字は大きな意味を持ちます。もちろん、この数字を聞くと、歴史好きの皆さんはすぐに「ピンとくる」のでないでしょうか。
そうです、西暦645年は、日本古代史上を揺るがす大事件である大化の改新(蘇我蝦夷・入鹿父子を滅亡させた事件を乙巳の変といい、その後の政治改革を大化の改新と称する)が起きた年です。
中大兄皇子や中臣鎌足らが、飛鳥板葺宮で蘇我入鹿を殺害。さらに、兵をもって甘樫丘の麓にあった入鹿の父・蝦夷の邸宅を囲み、蝦夷を自害させ、蘇我本宗(本流)家を滅亡させました。
この事件を契機に天皇家(大王家)が中心になり、日本が律令(法律・刑罰)を備えた中央集権国家としてスタートを切る、そんなきっかけとなったといわれる出来事なのです。
大化の改新の歴史的な意義や真実の考察は別の機会に譲るとして、この事件で暗殺された、蘇我入鹿について簡単に触れてみましょう。
【古墳時代以前から続くとされる有力豪族・蘇我氏】入鹿は、西暦611年頃に生まれたと考えられています。蘇我氏は、古墳時代以前から続くとされる有力豪族ですが、歴史上で存在が確実視されるのは、入鹿の曾祖父である稲目からと考えられます。
稲目から馬子-蝦夷-入鹿と4台にわたり本宗家の血筋は続き、稲目と馬子は、それぞれ自分の娘を天皇に嫁がせ、いわゆる外戚として大きな権力を握りました。
二人の権力を引き継いだ、蝦夷、入鹿も蘇我氏系の大王の血縁者として勢力を振るいます。蝦夷は、妹の法提郎女が嫁いだ欽明天皇をバックに、そして入鹿は二人の子であり皇位継承No.1の地位にあった古人大兄皇子を後見することで、ヤマト政権内で最高権力者としての地位を固めたのでした。
乙巳の変の舞台となった飛鳥宮(板葺宮・浄御原宮)の復元井戸跡。(写真:Wikipedia)
蘇我入鹿に対する本当の評価
明日香村にある蘇我入鹿首塚と蘇我氏邸宅があった甘樫丘。(写真:T.TAKANO)
大化の改新で中大兄皇子らに討たれた蘇我入鹿の歴史的な評価を蘇我氏の全体像を踏まえて、少々触れてみたいと思います。
蘇我氏本宗家(稲目から入鹿)が生きた時代、中国では律令を国の基準とした国家である、隋から唐へ王朝が変わる時代でした。こうした動きは、中国から朝鮮半島を経て日本へも大きな影響を与えたのです。
特に、隋・唐が用いた律令制は、豪族の連合政権であったヤマト政権の国家運営に根本的な変革を促したのは間違いないでしょう。
蘇我氏は、朝鮮半島からの帰化人である渡来人と密接な関係を築いた氏族といわれています。蘇我氏が、律令制に通じた渡来人を起用して、中央集権的な官司制の確立を目指したと考えても、何の不思議もないでしょう。
その政策が、馬子・蝦夷・入鹿と受け継がれたのです。この点に関しては、中大兄皇子(天智天皇)らの改新政府が推進した政策と何ら変わることがないのにお気づきでしょうか。そうです、開明的な蘇我氏こそが大化の改新の先達的な役割を果たしたのです。
入鹿の祖父・蘇我馬子が発願した日本最古の寺院・飛鳥寺。(写真:T.TAKANO)
蘇我入鹿について、藤原鎌足・武智麻呂らの事績を記した『藤氏家伝』は、次のように記しています。
旻法師、大臣に語りて曰く、吾堂に入る者、蘇我太郎に如くものなし
旻法師とは、遣隋使に同行して入隋、帰国したのちは改新政府の政治ブレーンとして、朝廷から信頼を集めた学者僧の旻のことです。
その僧旻が、自分の開いた私塾(吾堂)に学ぶ者の中で、蘇我太郎(入鹿)に及ぶものがないと讃えていたのです。私塾には、中臣鎌足、中大兄皇子(天智天皇)、軽皇子(孝徳天皇)などの、当時の秀才たちが学んでいました。そうした才能あふれる若者の中でも、入鹿の才は、抜きんでていたのでした。
蘇我氏の本拠地であったとされる明日香村島の庄。付近に石舞台古墳がある。(写真:T.TAKANO)
【前編】はここまで。【後編】では、蘇我入鹿を祀る入鹿神社をご紹介します。
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