胸中に秘めた熱い心…「鎌倉殿の13人」梶原景時が源平合戦で見せた獅子奮迅の大暴れ!

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胸中に秘めた熱い心…「鎌倉殿の13人」梶原景時が源平合戦で見せた獅子奮迅の大暴れ!

人間、極限状況になるとその本性を現わすと言いますが、こと日ごろ淡々と冷静な者が、ここ一番で熱くなる様子は、見る者の胸を打つもの。

今回は平安時代末期、源平合戦のハイライトである一ノ谷合戦において繰り広げられた梶原景時(かじわらの かげとき)親子の大暴れ「梶原の二度駆け」を紹介したいと思います。

血気に逸る景高を追い……

時は寿永3年(1184年)2月7日、梶原景時は源範頼(みなもとの のりより。頼朝公の異母弟)率いる大手(主力)の軍勢に参加。その傍らには長男・梶原源太景季(げんた かげすえ。23歳)と次男・梶原平次景高(へいじ かげたか。20歳)を伴っています。

楊洲周延「源平盛衰記 四 梶原景時」

「よいか平次。御殿(頼朝公)は『功名に逸(はや)って後に続く者を顧みず、単騎で抜け駆けする者には恩賞を与えぬ』との仰せじゃ。一軍の将たる自覚を持って兵を率いよ」

血気盛んな景高を諭す景時でしたが、そんな言葉を鼻で嗤い、即興で一首詠みました。

もののふの とりつたへたる 梓弓(あずさゆみ)
ひいては人の かへすものかは

【意訳】武士が先祖代々受け継いだ梓弓(※)は、ひとたび引けば(射放たれた矢が)戻ることはないように、私もまた戻りません。

(※)元は梓の木で作った神事用の弓でしたが、後に弓一般を呼ぶようにもなりました。

「一軍の将なればこそ、いちいち後に続く者を顧みるのではなく、者どもを我が後に続かしむる心意気でなくば務まりませぬ。御免!」

若者らしく溌溂たる生意気さで言い返すと、景高は敵中へ単騎先駆けてしまいました。

歌川貞秀『英雄百首』より、梶原平次景高

「こらっ、待てと申すに……えぇい、平次を見殺しには出来ぬ。者ども、参るぞ!」

「「「おおぅ……っ!」」」

景高を孤立させぬよう、景時と景季は全軍を率いて敵中へなだれ込みます。

「平次!戻れ!」

「まだまだ!」

当たるを幸いとばかり敵を斬り倒す景高をどうにか「転進」させ、軍勢を引き上げてきた景時ですが、今度は乱戦の中で景季が取り残されてしまいました。

孤軍奮闘する景季を救いに……

「源太!源太がおらぬ!源太!」

ただ独り敵中で血路を斬り拓くべく闘っている景季の姿を思い浮かべ、景時は今にも泣きだしそうな勢い。

「源太!今すぐ助けるぞ、待っておれ!」

先ほどは口酸っぱく景高をたしなめていた景時ですが、景季を喪ってはならぬとたった一騎で敵中へ殴り込みます。

「父上を討たせてはならぬ!者ども続け!」

「「「お、おおぅ……っ!」」」

全力で敵中へ駆け込んで引き上げて、また駆け込んで……郎党らは大変だったでしょうが、景季の命がかかっていますから、泣き言なんて吐いていられません。

「源太!」

果たして見つけた景時は、ただ一人で大軍に包囲されながらもなお闘志を絶やすことなく、背後から攻撃されぬよう、梅の木を背に奮闘していました。

孤軍奮闘する景季(中央)を助けに来た景時(左奥)。歌川国芳「生田森追手源平大合戦」

「おぉ、無事だったか!心配したぞ!」

景時らの姿に安堵の笑みを浮かべた景季は、その箙(えびら。矢を入れる腰箱)に梅の枝を挿しており、味方はもちろんのこと、敵方の平氏ですら

「東夷(あづまゑびす。東日本住民≒坂東武士に対する蔑称)にも梅を愛する風雅の者がおった」

など称賛の声が上がるほどであったと言います。

「それはそうと父上、いつまでも子供扱いはおやめ下され!」

「うるさい!いくつになろうが、そなたは我が子……いいから帰るぞ!」

かくして梶原父子はみんな無事に生還。この武勇を人々は「梶原の二度駆け」と称えたのでした。

終わりに

その後、景季らは敵将・平重盛(たいらの しげもり。清盛の五男)を捕らえるなど武勲を立て、大いにその勇名を高めます。

歌川国芳「武勇准源氏 梅枝 梶原源太景季」

梶原景時と言えば、源義経(よしつね)をはじめ、多くの御家人たちを讒訴(ざんそ。他人を陥れる訴え)によって葬り去った冷徹非道の極悪人と思われがちですが、家族思いであったことは元より、無実の御家人については庇うこともありました。

私情を排して任務に臨む公正な態度が、時として(こと都合の悪い者にとっては)冷徹に見えることもあったでしょうが、すべては頼朝公の、ひいては鎌倉のため……その胸中に秘めた熱い忠義の心が、近年見直されつつあります。

※参考文献:
石川透ら『源平盛衰記をよむ 源氏と平家合戦の物語』三弥井書店、2013年3月
梶原正昭ら校注『平家物語』岩波文庫、2000年7月

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