衛藤美彩の個人PVで描かれた「コミュニケーションの壁」【乃木坂46「個人PVという実験場」第20回4/5 (2/2ページ)

日刊大衆

異様に大きいその梱包を開けると、緩衝材に包まれて顔を見せるのは衛藤その人。しかしそれは、中田の各種個人PVがキュートに表現していたような、無機物を比喩的に人間化した姿とは少し異なる。衛藤が演じているのは、人間と同じように動き会話をする、人型のアンドロイドのようだ。「電源」が入る前の彼女を見つめる男性の真剣な眼差しからは、アンドロイドを迎え入れることへのひとかたならぬ決意がうかがえる。

 やがて、電源が入り目を覚ます衛藤。しかし、彼女の「起動」を目の前で待ち望んでいたはずの男性は喜ぶどころか、一切の反応を示そうとしない。というのも、彼自身もまた、画等と同じ構造を持つ存在であり、衛藤が目覚めたとき彼は動作を停止していたためだ。そして、衛藤の動力となっているのがコードの長さが限られた有線の電源一本であることも判明。その電源はすなわち、一人暮らしの男性が常に自分用に用いていたものだった。

 衛藤が電源によって「生きている」時間は、そのまま彼が電源を失って「生きていない」時間となる。同じ時間と空間を共有しながら、同じ感動をともに分かち合えない困難が二人の前に立ちはだかる――。

 衛藤とパートナーの男性(佐々木大介)の二人芝居で進行するショートドラマ「彼と彼女の時間」は、二人が常に同じ空間で共演しながら、二人が同時に「生きている」シーンがほとんど登場しない。しかもどちらが「生きている」のかがシーンの転換ごとに次々と入れ替わってゆく。

 それでもなお、二人は互いにコミュニケーションをとり、ある方法で会話を成り立たせていく。そしてそのなかで、衛藤は二人が“ともに生きる”ことを実現すべく、行動を起こす。性質上、きわめてハイテクな構造を持つはずの二人が、障壁を前にしてどうにかコミュニケーションを成立させるその仕方が、非常にアナログで地道なスタイルであることも相まって、せつなくも可愛らしいドラマに仕上がっている。

 この個人PVが収録されたシングルで、初めてシングル表題曲のフロントに立った衛藤がだが、すでに演技者としての技術も風格も身につけている。シーンが切り替わるごとに「生きている」状態と「生きていない」状態を交互に安定して演じ分け、このドラマの基本的なクオリティを信頼に足るものにしている。のちに映像でも舞台演劇でも順応力の高い俳優として活躍していくポテンシャルが存分に発揮され、断絶されていた「彼と彼女の時間」が溶け合っていくまでの道程を静かに、しかし巧みに表現した。

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