藤本タツキ『ルックバック』の“修正”は本当に正しいのか? 浮かび上がる様々な疑問点 (2/2ページ)

まいじつ

しかしその修正内容には、疑問点も多い。

そもそも修正前の「犯人」は、藤野や京本と同じ創作畑の人間として描かれていた。同作のテーマが「クリエイターの業を描く」というものだったと考えると、その存在は大きな意味を持っていたと言わざるを得ない。修正後にはクリエイターを志す者とクリエイターの〝敵〟が対峙する、というシンプルな構図となっており、多様な読みの可能性が失われているからだ。物議を醸したからといって早急に修正するのではなく、編集部を含めて慎重に方向性を検討すべきだったのではないだろうか。

また、この度の対応によって「クレームを入れれば作品を変えられる」という前例ができてしまったとも言える。もちろん実在の事件をモデルとした場合、関係者から届いた意見を尊重することは大切だ。しかし「ルックバック」の場合、関係者から具体的にどのような声があがっているのかも不明瞭なまま、一部で問題視されているという〝空気〟を受けて修正されたようにみえる。こういった対応が示されたことで、「SNSで炎上しそうな表現は避ける」という風潮が生まれてしまう可能性もあるだろう。

あらゆる創作物はその時代に消費されるだけでなく、何十年も時間を超えて読み継がれるもの。SNS上の空気によって内容を変えることが本当に正しいのか、今一度考えるべき時が来ているのかもしれない。

文=野木

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kohanova / PIXTA

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