久保史緒里、佐藤楓の個人PVで描かれた「一個人としてのアイデンティティ」【乃木坂46「個人PVという実験場」第20回5/5 (3/3ページ)

日刊大衆

住人である漫画家には彼女の存在は見えていない。断片的に彼女の特徴を描写するシーンが並べられるものの、霊魂とも妖精ともつかない佐藤の立ち位置がはっきりと語られることはない。

 本作で佐藤が演じているのは、住人の一喜一憂に共鳴するような存在でもあり、また住人の頭の中にいる別の他者への思いが、いくぶん変則的に具現化したかのようでもある、淡くて複雑な何者かである。

 ここまでとりあげてきた作品は、無機物や架空の生物、霊的な存在などに、人間的な感情やふるまい、コミュニケーションの可能性を託すドラマ群だった。それに対して、佐藤が主演する「わたしのわたし」は、人間的な感情を持ったその「もの」が具体的に何であるのかさえ定かでなく、いわば受け手にゆだねられている。それだけに、描かれるドラマもまたシンプルでなく、いくつもの解釈の可能性が開かれている。

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