気鋭の映像クリエイター中島望監督が描く乃木坂46「個人PV」の世界

日刊大衆

※乃木坂46新内眞衣/画像はEXwebの記事(https://exweb.jp/articles/-/83803)より抜粋
※乃木坂46新内眞衣/画像はEXwebの記事(https://exweb.jp/articles/-/83803)より抜粋

乃木坂46「個人PVという実験場」

第21回 平凡で孤独な個人の憂鬱を普遍的に映す手法 1/3

久保史緒里の「旅しおり」シリーズ

 乃木坂46の久保史緒里は2017年から、WEB動画シリーズ「乃木坂46 久保史緒里の宮城・仙台 旅しおり」への出演を続けている。久保の故郷・宮城県の観光名所を訪ね歩いて紹介するこの「旅しおり」シリーズはまた、久保のキャリア初期からの姿を定期的に記録する映像作品でもある。

https://www.youtube.com/watch?v=UXmxx23AJTM
(※「乃木坂46 久保史緒里の宮城・仙台 旅しおり」鳴子 紅葉篇)

 久保を含めた3期メンバーがグループに本格合流する前年、彼女の実質的な活動初年度から制作されてきた同企画は、昨年春の新型コロナウイルス感染拡大以降、通常の観光名所ロケが一旦休止され、スタジオでのトーク等で構成された動画の更新となっている。とはいえ、あらためて2017年から今日までのアーカイブをふりかえるとき、彼女の巧みなMCの片鱗をすでに各所にうかがうことができる。

 この「旅しおり」のディレクターを務めてきたのが中島望である。中島はまた、「旅しおり」がスタートするよりもずっと以前から乃木坂46の映像作品にかかわり、個人PVにおいてもたびたび佳作を生んできた作家だ。

 たとえば、ドラマ作家としての中島の繊細な手つきは、乃木坂46の13枚目シングル『今、話したい誰かがいる』に収録された新内眞衣の個人PV「世界は夜回る」にうかがうことができる。

https://www.youtube.com/watch?v=jDqhpAB6YFk
(※新内眞衣個人PV「世界は夜回る」予告編)

■新内眞衣の「世界は夜回る」

 かつて人から聞いた「世の中の大事なことは夜に起こっている」という言葉に漠然と影響されるように、いつしか夜型の生活を送り、夜中に都会をふらついては朝方に家に帰り着く生活を続ける主人公(新内)。「大事なこと」を見逃さないように昼夜逆転の生活を送る彼女だが、その表情は常に物憂げである。

 彼女が家に帰り着いて他愛のない時間を過ごし、眠りにつくまでの昼間の時間は、なるほど「大事なこと」など起こっていないかのように退屈で無為に思える。だからこそ彼女はさしたる目的を見いだせないままに、何かが起こるらしい夜に備えて眠りにつく。

 しかしまた、本作でごく視覚的に表現されるように、彼女が眠っている昼間のあいだにも確実に、世界になにがしかの変化は起こっている。目覚めた彼女は、ただその残骸を力なく目にするばかりである。その変化自体はさして重大なものではないが、おそらく彼女が何かを期待して出向く夜の都会で起きていることもまた、同じようにさして重大ではない。

 それでも彼女は夜に向けて準備し、気だるく都会に向かって歩いてゆく。「“おはよう”と言えなくなってしまった」と自己言及する彼女の生活に、特に何かが待っているようにはみえない。表面的には、どこまでも何も起こらないとある一日が描写されて本作は幕を閉じる。

 これといった出来事も、大きな感情の起伏も描かないこの一篇のドラマはしかし、具体的なエピソードに依存しないゆえに却って、都市に生きる平凡で孤独な個人の憂鬱を普遍的に映している。抑制した表情で主人公を演じる新内の佇まいもまた確かな好相性をみせ、一歩間違えば方向性を見失いかねないこの静かなドラマを、バランスよく成立させている。

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