わずか20年で世界を席巻し日本を襲った「梅毒」の猛威。日本史上の有名な人物も感染【前編】

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わずか20年で世界を席巻し日本を襲った「梅毒」の猛威。日本史上の有名な人物も感染【前編】

医学が未発達であった20世紀以前、現代では治療方法が確立されている病気によって多くの人々が命を落とした。中でも感染症の脅威は別格で、地球規模のパンデミックが起こった例も存在する。

今回は、感染症の中でも主に性行為によって感染を引き起こす「梅毒(ばいどく)」が日本に及ぼした影響についてご紹介する。

梅毒(ばいどく)とは

梅毒トレポネーマと呼ばれる細菌が体内に侵入することで発症する性感染症の一つ。主に性行為によって感染するが、母子感染も存在する。

現在ではペニシリン系の抗菌剤によって治療が可能だが、免疫を獲得できないことから再感染のリスクがある。近年の日本国内でも年間数千例の感染報告が認められている。

梅毒トレポネーマ(Wikipediaより)

起源と流行の経緯

人類が梅毒を認識したのは15世紀末といわれている。梅毒の起源については諸説あり、明確な発生時期は定かではない。

最も有力なものは、15世紀当時に新大陸を発見したコロンブスらが媒介となって世界中に広がった説である。アメリカの風土病として先住民の体内にあった梅毒菌がコロンブスら旧大陸の人間の体内に侵入し感染。帰国と同時にヨーロッパ諸国に伝染拡大し、世界中に広がったと考えられる。

また、古代から旧大陸に存在したという説もある。コロンブスの新大陸発見以前、旧大陸で埋葬された遺骨に梅毒に類似した病変が認められている。

いずれにしても、15世紀末を境に梅毒は急速に世界中に伝染した。イタリアやフランスでの流行を皮切りに、インド航路に乗って東アジアに進出。中国や東南アジア諸国にも伝染することになる。

アメリカ大陸で梅毒に感染した可能性があるコロンブス(Wikipediaより)

日本への伝染

日本で梅毒の存在が認められるのは1512年の大阪だった。アメリカ大陸から広がった説をとるならば、わずか20年程度の間にヨーロッパからアジアを横断し日本に到達したことになる。

それは種子島に鉄砲が伝わるよりも遥か以前であった。伝染ルートは、当時交流が盛んに行われていた中国からと考えられており、貿易商人による性行為感染が引き金となった可能性が高い。

交通機関や移動手段が限定的であった当時において、20年という短期間での世界感染拡大は異例のスピードであり、人類は自らの肉体を介した感染力の凄まじさをまざまざと見せつけられる結果となった。

【後編】へ続く

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