「『一番前の席が良い』とバスでぐずる幼い息子。他の乗客が居なくなったので座らせると、運転手が...」(兵庫県40代女性) (2/3ページ)
「S、あとバス停1つだけど、1番前に座れるよ」
長男はお目当ての席に座れたことでやっと泣き止んでくれて、私はほっとしたと同時に、一気にひどい疲労感に襲われました。
そこに運転手さんから、声をかけられたのです。
「バス好きなんか?」「Sくんって言うの? バス好きなんか?」
そう言ってチラッとこちらを見た運転手さん。長男が頷くと、また前を見て何事もなかったように運転に戻られました。
長男は運転手さんに話しかけられたのが嬉しかったのでしょう。いつもは外ばかり見ていますが、そこからは運転手さんに釘付けでした。いつもなら張り切って押す「次、止まります」のボタンも忘れていたくらいです。

私も忘れそうになっていて、慌ててボタンを押しました。すると、運転手さんが、
「次は、Sちゃんバス停。Sちゃんバス停」
とアナウンスしてくださったんです。もうビックリでした。
無言で、ニコッと笑いかけてくれた運転手さん長男も自分の名前を言われて、最初はきょとんとしていました。
「Sちゃんバス停やって! 良かったなぁ。着いたで!」
と私が呼びかけると、「降りる!」と元気に立ち上がり、運転手さんに「あーと(ありがとう)」と言って降りました。
私も次男と降りるとき、「ありがとうございました」と、お礼を伝えると、運転手さんはただ無言で、ニコっと返してくださいました。
あの粋な運転手さん。今でも阪神バスに乗るたび、あの時の方ではないだろうか、と探しています。
長男だけでなく、育休中で早く仕事に戻りたいのに戻れない焦りと、育児疲れでぐったりしていた私の心も癒してくれました。