海から5500種を超える未知のウイルスを発見

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海から5500種を超える未知のウイルスを発見
海から5500種を超える未知のウイルスを発見

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 海の遺伝物質を分析したところ、「5500種を超える未知のRNAウイルスが特定」されたそうだ。これによって「RNAウイルスの系統が倍増」したと、『Science』(2022年4月7日付)で発表された。

 RNAウイルスは、ゲノムとしてリボ核酸 (RNA)をもつウイルスのことだ。

・DNAウイルスに比べ、比較的研究が進んでいないRNAウイルス
 RNAウイルスは、普通の風邪から新型コロナまで、さまざまな病気を引き起こすことで知られている。しかも人間だけでなく、動植物にも感染する。

 このウイルスは、遺伝情報をDNA(デオキシリボ核酸)ではなくRNA(リボ核酸)に持つという特徴があり、DNAウイルスよりもずっと速く進化する。

 これまで自然界に存在するDNAウイルスなら何十万種も分類されてきたが、RNAウイルスは比較的研究が進んでいない。

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海の中にはこれまで考えられていたよりたくさんのRNAウイルスが存在する / image credit:GuillermoDominguezHuerta、CC BY-ND・特定のタンパク質の遺伝子でRNAウイルスを区別
 細胞で構成される人間などの生物とは違い、ウイルスには「遺伝子のバーコード」として機能する特有の短いDNAが存在しない。ウイルスの種を区別するのが難しいのは、このバーコードがないためだ。

 そこでオハイオ州立大学の研究グループは、とあるタンパク質の情報を持つ遺伝子の特定を試みた。

 このタンパク質は、RNAウイルスが増殖するには不可欠なもので、彼らに共通する唯一のタンパク質でもある。

 だが、そのタンパク質の設計図である遺伝子には、ウイルスの種によってわずかな違いがある。だから彼らを区別する手がかりになるのだ。・海から5504種の未知のRNAウイルスを発見
 今回、研究グループが分析したのは、Tara Oceansの世界的な調査プロジェクトによって収集されたプランクトンのRNA配列データーベースだ。

 小さな水生生物の総称であるプランクトンは、海の食物連鎖には欠かせない存在で、RNAウイルスの一般的な宿主でもある。

 そんな彼らのRNA配列の分析から、RNAウイルスのタンパク質情報を持つ遺伝子が4万4000も特定された。

 研究グループはさらに、発見された遺伝子の進化的なつながりの解明も試みている。遺伝子の配列が似ているほど、ウイルス同士はより近い種ということになる。

 残念なことに、そうした配列が進化したのは大昔のこと(最初の細胞の登場よりも前かもしれない)なので、共通祖先から新しいウイルスが分岐したことを示す遺伝的サインは、とっくに失われてしまっている。

 だが機械学習するAIのおかげで、そうした配列を体系的に整理して、人間が手作業でやるよりもずっと客観的に違いを探せるようになった。

 こうした分析によって、5504種の新しい海洋RNAウイルスが特定された。しかも、これまでRNAウイルスの「門」(分類学上のグループの1つ)は5つだったが、10門に倍増した。

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独自の手法で編成した、これまで知られていたRNAウイルスの5つの既知の門 / image credit:Zayed et al., Science Volume 376:156(2022).

 発見されたRNA配列を地域別に分けてみると、新たに見つかった2門は、広い海に多く存在し、温帯海域か熱帯海域のいずれかを好むことが明らかになった。

 なお前者の門はTara Oceansに因み「タラビリコタ(Taraviricota)」、後者は北極海に因み「アルクティビリコタ(Arctiviricota)」という。

 研究グループによれば、タラビリコタは複製方法が分岐したとある2系統のRNAウイルスを結びつけてくれるかもしれないという。

 長い間探し求められてきた進化のミッシングリンクかもしれないのだ。

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海洋RNAウイルスの分布図。円のくさびの大きさは、その地域にいるウイルスの豊富さを、色は「門」を示す。 / image credit:Zayed et al., Science Volume 376:156(2022)・地球初期の生命の進化を知る手がかりに
 こうした発見は、RNAウイルスの進化の歴史を紐解くヒントになるだけでなく、地球初期の生命の進化を知る手がかりにもなる。

 新型コロナの世界的流行からもわかるように、RNAウイルスは命に関わる病気を引き起こすことがある。

 その一方、化学的なレベルで環境や食物連鎖に影響する微生物など、さまざまな生物に感染するために、生態系の中で重要な役割を担ってもいる。

 そんなRNAウイルスが生きている世界をマップ化できれば、地球の生態系を織りなす生物にウイルスがどう影響しているのか知ることができる。

 また今回の成功によって、遺伝的データベースから新しいウイルスを分類する手法も改善された。

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Photo by Brian McGowan on Unsplash

・まだわかっていないこと
 たくさんのRNAウイルスが見つかったが、それが感染する相手を特定するのは簡単ではない。

 また、遺伝的な複雑さや技術的な限界ゆえに、RNAウイルス・ゲノムのほとんどは断片的なものでしかない。

 研究グループの今後の目標は、欠けていそうな遺伝子を調べ、それが時間と共にどのように変化したのか解明することであるという。

 こうした遺伝子がわかれば、ウイルスの働きをさらに深く理解できるようになるとのことだ。

References:Researchers identified over 5,500 new viruses in the ocean, including a missing link in viral evolution / written by hiroching / edited by / parumo


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