「鎌倉殿の13人」義経ロスなんて言ってらんない今後も怒涛の展開が…第20回放送「帰ってきた義経」振り返り
平家討伐の英雄でありながら、謀叛人となって都を落ちて行った源義経(演:菅田将暉)は奥州・平泉の古巣で藤原秀衡(演:田中泯)と再会を果たします。
秀衡「平家を倒したのはお前だ。ようやった、九郎」
今までいくら手柄を立てても、誰からも褒められなかった義経の感涙に心打たれた方も多いのではないでしょうか。
しかし秀衡が亡くなると、跡を継いだ藤原泰衡(演:山本浩司)が遺言に叛いて義経を襲撃。
自刃して果てた義経の首級は鎌倉へ送られ、兄の源頼朝(演:大泉洋)とも再会を果たしたのでした。
頼朝「九郎……よう頑張ったなぁ。さぁ、話してくれ。一ノ谷、屋島、壇ノ浦。どのようにして平家を討ち果たしたのか。お前の口から聞きたいのだ。さぁ、九郎……九郎……話してくれ、九郎……九郎……すまぬ……」
かくして「帰ってきた義経」。この首で平泉が守れるなら……とけなげな事を言っていましたが、まだまだ人を信じすぎる癖は抜けていなかったようです。
だって御曹司がいなくなっても、どのみち奥州は潰す気満々なのですから。
天下を平らげて戦をなくすため、鬼になった頼朝と鬼になっていく北条義時(演:小栗旬)……それでは今週も、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」第20回放送を振り返って参りましょう。
まさかの近親結婚?藤原秀衡はなぜ正室を息子の国衡に嫁がせたのか義経にとって最大の庇護者であった奥州の覇者・藤原秀衡。しかし彼も最期の時を迎えます。
家督は嫡男である次男の藤原泰衡(演:山本浩司)に継がせる一方、長男でありながら庶子(正室以外の子)である藤原国衡(演:平山祐介)には自分の正室である“とく(演:天野眞由美)”を嫁がせました。
国衡にとって義理(※)とは言え、母親を娶るというのはちょっと驚いた視聴者も多いのではないでしょうか。
奥州藤原氏・秀衡周辺の略系図。直接の血縁はないと言っても、かなり気まずい。
特に現代では嫡子・庶子(非嫡出子)という概念に馴染みの薄い方も多いため、画面の片隅に家系図を示すなどの工夫があっても良かったように思います。
それはそうと、なぜ秀衡は争いの火種となりかねない処置をとったのでしょうか。実際に劇中では泰衡の異母兄であり“継父”となった国衡が泰衡と対立。それが鎌倉方につけいられる結果を招いています。
秀衡はかねてより兄弟間の対立を憂えており、庶子であるがゆえに立場の弱い国衡を“父”とすることで泰衡に尊重させようとしたのでしょう。
逆に言えば、そこまでせねばならないほど関係が悪化していたとも見られ、秀衡の死をもって奥州藤原氏の崩壊は避けられなかったのかも知れませんね。
奥州藤原氏の栄華を築き上げた秀衡。自身の死をもってその崩壊を予感していたのかも。
夜、義経の前に表れた秀衡の亡霊が愛おしげに両手で土を救い、天に手を伸ばした静かな舞はその末路を予感させます。
そして六人兄弟の末っ子である藤原頼衡(演:川並淳一)。内部分裂を煽る義時に斬りかかろうとして善児(演:梶原善)に殺されましたが、三男の藤原忠衡(ただひら)や四男の藤原高衡(たかひら)、そして五男の藤原通衡(みちひら)は割愛。
『吾妻鏡』などで実在が確認できるのは四男の高衡まで、五男と六男は実在性が低い関係で殺させやすかったのと、頼衡は義経より前に死んでいるため都合がよかったものと思われます。
「何かと役に立ちますよ」今週も活躍した仕事人・善児義経を「(生かさず)連れて帰る」任務を帯びて奥州平泉へ旅立つ義時の門前に立っていた善児。
今週も藤原頼衡を刺し、静御前の男児を由比ヶ浜に沈め……と大活躍。着実に確認殺害戦果を増やしていきます。
殺すとなれば、赤子だろうが何だろうが迷わず殺す。尊い命を奪うのだから、良心の呵責なんて垣間見せたら、殺す相手に失礼というもの。「迷うくらいなら、謝るくらいなら最初から殺すんじゃない」というものです。
最終回までに何人を仕留めるのか、そして因果応報とばかり惨たらしく最期を迎えるのが今から楽しみですね。
ちなみに、静御前の男児を沈め殺したのは彼女を預かっていた御家人の安達新三郎清経(あだち しんざぶろうきよつね)。いちいち登場させるのも何だし、善児に殺させた方が残虐ぶりが高まるのでそうしたのでしょう。
ともかく今週はセリフが多くて、ファンの一人としては嬉しい限りでした。
善児「爪の間に泥がへばりついてました。あれは百姓の手です」
元は百姓ということで、義経の帰農が本当かどうか(謀叛の野心を隠していないか)確認した義経に答えていましたが、それだけだとどうでしょう。
爪の間に泥を詰めるなど手を突っ込めばすぐに出来ますし、それこそ子供が遊んだってそうなります。爪の割れとか肌の荒れとか、そういう点の方が説得力を増しそうです。
これは女子(おなご)の覚悟…静御前が魅せた決死の舞い道(演:堀内敬子)の侮辱に堪えかね、自分が義経の愛妾であると名乗ってしまった静御前(演:石橋静河)。
何とかして彼女のお腹にいる子供を守りたかった政子(演:小池栄子)や実衣(演:宮澤エマ)の思いも虚しく、鶴岡八幡宮の舞台に躍り出ることに。
助かるためには、下手に踊って一時の恥を忍ぶよりない……そこで初めはひどい舞いを演じたもののやはり耐えかね、お馴染み「しづやしづ……」を詠じます。
できれば「吉野山……」からやらないと頼朝が怒る理由が半減してしまいますが、ここでは「彼女が静御前であるか否か」に重点が置かれたため、割愛されてしまいました。
頼朝の怒りも曖昧なため、政子のフォローと言うか、頼朝を叱りつけたエピソードもあっさりと過ぎていきます。
ちなみに伴奏を務めた銅拍子の畠山重忠(演:中川大志)と鼓の工藤祐経(演:坪倉由幸)は『吾妻鏡』の通り。笛は誰が務めたのでしょうか。
三浦義村(演:山本耕史)が「静御前を間近で見たいから参加した。楽器なんて適当に叩いてりゃいい」などと放言して、重忠が真面目に怒っているシーンがとても素敵でした。
それはそうと、前半の下手な舞いと後半の上手な舞いの違いがはっきり判りませんでした。何となくガサツな動きなんだろうな、くらいは感じましたが……。
ここはもっとドタバタから優雅へとメリハリをつけた方が(筆者のように歌舞音曲に疎い)視聴者の感動が引き立ったのではないでしょうか。
なお『吾妻鏡』には、静御前の舞いについて
「誠是社壇之壯觀。梁塵殆可動。上下皆催興感……」
※『吾妻鏡』文治2年(1186年)4月8日条【意訳】まことに神がかった素晴らしい光景。梁につもった塵(ちり)一つでさえ、感動に打ち震えないものはなかった。その場にいたすべての者が胸を昂らせた……(※ただし頼朝を除く)。
と記されており、もっとその辺りを強調して欲しかったと思います。
最期まで義経らしく…義時・景時を唸らせた「鎌倉攻略作戦」平泉を守るためには、もはや義経を討つよりあるまいと決意した泰衡。一方で正室の里(演:三浦透子)から襲撃事件の真相を告白された義経。
土佐坊昌俊(演:村上和成)の襲撃は頼朝の企みではなかった……すべて自分の勘違いで取り返しのつかないこと(頼朝追討の宣旨を要求)をしてしまった後悔から、カッとなって里を殺害してしまいました。
我に返っても後の祭り、娘も殺して自刃の覚悟を決めたようです。
最期まで嫉妬深く業の深いキャラでしたが、自刃を覚悟している義経が自分を殺す良心の呵責を和らげようと、あえて告白したのかも知れませんね。
日ごろどれほど不満たらたらであっても、それだけ義経に愛情を持っていたのでしょう。
最期まで義経を守り抜くため奮闘した弁慶。歌川国芳「奥州高館城大合戦之図」
そして武蔵坊弁慶(演:佳久創)に自刃までの時間を稼がせながら、義経は義時に鎌倉討伐の作戦を披露。
ざっくり言えば「陸路を南下して鎌倉の主力を引きつけ、その間に北上川から太平洋に出て海路を迂回。相模湾から上陸して陸路からの部隊と鎌倉を挟撃する」というもの。
道中に三浦半島の三浦一族に見つかってしまうが、そこは利に敏い義村を味方に引き入れれば問題なし……との事ですが、果たしてそれはどうでしょうか。
陸路はどうとでもなるとして、当時の航海技術で太平洋の外海をまったく発見されず、かつ確実に迂回できるかという問題があります。
当時、日宋貿易や遣唐使など外洋に出るのは命懸け。理屈ではともかく、じゃあ実際に避ける兵数や装備、兵糧なども算段に入れねば実感が湧きません。
とは言え「海から攻め込む」という作戦は鎌倉幕府を滅ぼす時に新田義貞(にった よしさだ)が採っており(西から磯伝いですが)、また鎌倉幕府が滅んだのは元弘3年(1333年)5月22日。
海神に宝刀を奉げ、潮を退かせて鎌倉へ攻め込む新田義貞。♪七里ガ浜の磯伝い 稲村ガ崎 名将の 剣投ぜし 古戦場……唱歌「鎌倉」でも歌い継がれる名場面。月岡芳年筆
恐らくは令和4年(2022年)5月22日の放送に、これを持って来たかったのでしょう。その趣向をこそ味わうべきであり、野暮を言っちゃいけません。
義経の作戦はその軍才を理解していた梶原景時(演:中村獅童)にももたらされ、最期まで義経らしさを忘れないところに、彼らしさが感じられます。
弁慶の奮戦ぶりを楽しげに眺めるその姿は、ただ大人しく死ななそうな気配も漂わせていました。彼の伝説は、まだ幕を下ろさなそうな気がしてなりませんね。
次週、八重の身に何が?!第21回放送「仏の眼差し」次週の第21回放送は「仏の眼差し」。予告画面から察する限り、この眼差しの主=仏とは義時の妻・八重(演:新垣結衣)を指すものと予想されます。
義時の「妻の顔を思い出してしまいました」と、義村の「八重さん!」と切迫したセリフから、死亡フラグが立ちに立っています。
これまで色々な不幸に見舞われてきたけど、ようやく幸せな暮らしを手に入れたところで一気に落とす。三谷幸喜らしい脚本と言えるでしょう。
金剛(後の北条泰時。演:森優理斗)さえ生んでしまえば、その生母である阿波局(史実での呼称)の生死はストーリーに何の支障もありません。そもそも八重姫じたいはとっくにフェイドアウトしている存在ですし……。
新垣結衣が初出演!大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で演じる北条義時の初恋相手?八重姫の悲劇幼馴染にして初恋の相手であり、そして最愛の妻である八重を失った義時は心の闇を増大させ、より一層えげつなさを増していく展開が目に浮かぶようです。
何より、後に正室となる比奈(姫の前。演:堀田真由)を自然な=なるべく義時に反感を持たない形で迎えるには、どうしても八重さんが邪魔になってしまいます。
大河ドラマ「鎌倉殿の13人」では誰が演じる?北条義時が熱愛した正室・姫の前さて、他のセリフはこんな感じ。
頼朝「天が与えた罰なら、わしは甘んじて受ける」
この罰とは大姫(演:南沙良)の病を指しているのでしょう。その後、20歳で亡くなるまでずっと寝たり起きたりの暮らしが続きます。
平安時代の悲劇のヒロイン、源頼朝の長女「大姫」その悲恋と貞操の生涯(上)北条時政(演:坂東彌十郎)の「言うのぅ」は恐らく朝廷との駆け引き(の相談段階)。さすがに直後に映った後白河法皇(演:西田敏行)に直接は言わないでしょう。
りく「北条は安泰でごじゃいます」この抱いている赤子は念願の嫡男・北条政範(まさのり)と思われます。義時は江間の分家を立てているため、北条の家督はこの子が継ぐ予定ですが、果たして……?
「鎌倉中の御家人を集めよ。皆で捜すのだ!」
「あなたをお守りします」
これは一体誰の発言で、誰を捜す(守る)のか、声からはよく分かりません。そしてビジュアルだけで八田知家(演:市原隼人)がいよいよ登場。ワイルドな風貌がいい感じですね。
【鎌倉殿の13人】北条の敵か味方か…市原隼人が演じる北関東の梟雄・八田知家の生涯を予習皆さん、悲しい気持ちは解りますが、義経ロスなんて言っている場合ではありません。これからも展開目まぐるしい「鎌倉殿の13人」、ますます目が離せませんね!
※参考文献:
『NHK大河ドラマ・ガイド 鎌倉殿の13人 前編』NHK出版、2022年1月 『NHK2022年大河ドラマ 鎌倉殿の13人 完全読本』産経新聞出版、2022年1月日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan




