「患者満足よりスタッフ満足を」 ある開業医が下した決断 (2/2ページ)

新刊JP

■儲かっているのに誰もが不機嫌で疲れていた

スタッフが居着かないのには当時のクリニックの状況にも問題があった。
開業して間もない頃、近くの特養(特別養護老人ホーム)からの依頼で、通常の外来に加えて入所者の予防接種や往診を引き受けていたという。

徐々にクリニックの患者数が増え、忙しくなっている状況で、特養からの問い合わせへの応対もある。特養からの収入が増えクリニックの経営は右肩上がりだったが、楽しそうに仕事をしているスタッフは誰もいなかったという。儲かっているのに、誰も彼もが不機嫌で疲れた顔をしていた。

スタッフも自分も目の前の仕事に忙殺される状況で人を雇っても、丁寧に教える余裕はない。これでは新しく採用しても、またすぐに辞めてしまう。

だから、來村さんは「まずは自分たちがご機嫌で働けるシステムを作る」ことにした。そのための取り組みが「売上を追わないこと」、そして「患者満足度の前に、スタッフの満足度を考えること」だった。

これは簡単なようでいて大きな挑戦だ。経営者である以上売上は気になり、医師である以上患者を最優先させたくなる。しかし、それでも來村さんはクリニック運営の手法を根本的に変えた。

外来を完全予約制にし、1日の受診者数を限定することでそれ以上の売上を追うのをやめた。そして「患者最優先」から「まずは自分達自身の満足度を優先」にした。

これは「患者に真剣に向き合わない」ということではない。「今自分達にできることとできないことを把握し、できないことを無理にやらない」ということだ。

休日なく、救急なども受け付ければ、患者さんには喜ばれますが、それで現場のスタッフたちが疲弊して倒れてしまったら医療が継続できなくなり、結局は患者さんにも迷惑がかかり不利益になるのではという考え方です。つまり、自分達のできる範囲で責任を持って医療を提供し続けることが大切であると言い換えることができるかもしれません。(P45より)

「80%で働く」を実現し、余裕のある運営体制に変えたことで、無理せず疲弊せずに医療提供を続けられることができるようになったという來村さん。クリニックの休診日には他の病院に出向いて外来患者を診ることで、他の医師と交流したり最先端の医療情報に触れることもできているという。

自分やスタッフが心身をすり減らし、毎日の診療に忙殺されている。そんな状況をどうにかしたいが、どうしていいのかわからない。そんなクリニックは來村さんのやり方から得られるものは多いはずだ。

(新刊JP編集部)

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