「涙の種類に驚いた」川口春奈とSnowMan目黒蓮『silent』がここまで支持される理由【識者が徹底分析】
川口春奈(27)主演のドラマ『silent』(フジテレビ系)が快挙を続けている。『TVer』の見逃し配信は、第4話の配信後1週間で582万回再生という歴代最高記録を樹立。さらには放送のたびにSNSでドラマの関連キーワードがトレンド入りし、作中に登場するカフェや駅に「聖地巡礼」をするファンも多数いるようだ。
ドラマ『silent』は、川口演じるヒロイン・青羽紬と、Snow Manの目黒蓮(25)演じる佐倉想のラブストーリーがメイン。紬と想は高校時代に交際していたが、想は紬に理由を告げずに突然別れを切り出す。実は想は“若年発症型両側性感音難聴”を発症しており、紬を悲しませたくがない故に別れを告げたのだった。紬は鈴鹿央士(22)演じる戸川湊斗と同窓会をきっかけに交際を開始し、同棲していたのだが、偶然にも想と再会。別れから8年後、聴力を失った想と紬が新たに出会い直す、という物語だ。
近年では、夜19時から23時のプライムタイム帯に放送されている恋愛ドラマは少数派だ。2022年度秋クール作品でも長澤まさみ(35)主演の『エルピスー希望、あるいは災いー』(フジテレビ系)といった社会派作品や、岡田将生(33)主演『ザ・トラベルナース』(テレビ朝日系)、吉沢亮(28)の『PICU 小児集中治療室』(フジテレビ系)といった医療もの、水谷豊(70)主演の『相棒』(テレビ朝日系)といった刑事ものがラインナップに並んでいる。
恋愛ドラマが不作と言われる昨今、『silent』が多くの人を熱狂させている理由はなんなのだろうか。本サイトは、ドラマ評論家として活躍する吉田潮氏に『silent』の魅力を詳しく語ってもらった。
■川口春奈と目黒蓮の「泣き顔」の演技力
吉田氏は、主演を務める川口の「涙」の演技が出色だと話す。
「川口さんの涙の種類にびっくりしたんですよね。ボロボロ溢れ出る涙、ジワっと流れ出る涙など、涙ひとつ取っても全然違う。TVerで配信されている『第1章~紬から見る“silent”~』というドキュメンタリーでも、川口さん自身が涙のシーンは相手とシチュエーションをすごく色々考えて演じているということを話していて、考えて演じていたことを知り“すごいヒロインだな”と思いました。
NHK大河ドラマ『麒麟がくる』で帰蝶を演じた時も、一皮むけた印象でしたが、今回の役でさらに花開きました。恋愛ドラマでは登場人物が振った、振られたといったところを気にしがちですが、もっと微妙な、恋愛における紙一重の感情の揺れや迷いを上手に演じていると思います」(吉田潮氏=以下同)
目黒が演じている想は、手話やスマートフォンのアプリなどで紬とやり取りをしている。10月6日放送の第1話では、紬が想が別れを告げた理由は耳が聞こえなくなる病気ゆえだったことに気づいておらず、「連絡先教えてよ」と声をかける。聴力をほとんど失っていた想は、手話で紬に「好きだったから会いたくなかった。嫌われたかった」「うるさい。お前うるさいんだよ」と涙を浮かべて苦しそうな表情で伝えていた。
「そもそも想は口数が少ないのですが、手話も少なく、自分より相手のことをおもんぱかる人なんですよね。イケメンでめちゃくちゃモテそうなのに実はすごく不器用で……。首をかしげ、涙を浮かべて紬を見る表情には心が打たれました。
紬を悲しませたくないが故に別れを切り出し、真摯でいたいけれど相手を傷つけたくない、という感情をこんな顔で見せるのか、と感じました」
■制作陣がキャラクターを愛している
10月27日放送の第4話では、鈴鹿演じる湊斗が紬に対して「お願いがあって。別れてほしい。別れてほしい。別れよう」と告げる。湊斗は想と親友でもあり、想の病気をきっかけにして交流が途切れていたことを心苦しく思っていた。紬と交際していた湊斗が、想との再会をきっかけに身を引く決断をする展開は、ともすれば「都合が良い」と指摘されてしまいそうだが、ここに『silent』の妙味があるようだ。
「とにかく、鈴鹿さん演じる湊斗は最上級の優しさを持っていますね。自分よりも相手に尽くして、結果、疲れ切るというか。想と紬を見て嫉妬するよりは、自分自身で別れを決断し、想ともこまめに会う平和主義者なんです。
登場人物のバックボーンがしっかりと描かれており、制作陣がキャラに愛を持っていることが視聴者にも伝わっていて、“紬と想のカップル派”や“紬と湊斗のカップル派”といったことで意見を戦わせるよりは、穏やかに皆を見守る視聴スタイルが根付いたように感じますね」
登場人物の魅力以外にも、ドラマ『silent』は障がいを持つ人への無意識の偏見や思い込みである「アンコンシャス・バイアス」を気づかせる作りになっているようだ。
「ハンディキャップを描いたドラマとして、すごくいろいろな意見、角度から観察して作っているのではないかと思います。手話のシーンをとても長く取っていて、決めゼリフに手話が加わっていて、手話を覚えた方もいるのではないでしょうか。
音がないシーンを効果的に使い、ハンディキャップがある人を極端に美化せず、弱者として描かない。『silent』は手話が日常で、ごく身近にいる人を描いているんですよね。今後、ドラマ制作に大きく影響を与えそうで、とても意義があるドラマだと思います」
いよいよ佳境に入った『silent』。このまま、伝説のドラマとなるかーー。
吉田潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、コラムニスト、イラストレーター。『週刊新潮』(新潮社)で『TVふうーん録』を連載中。『週刊女性PRIME』や『文春オンライン』、『PRESIDENT ONLINE』などのメディアでもテレビドラマ関連の記事を執筆している。