俳優・山路和弘の活躍は幅広い。テレビを見ていれば、一度はその声を耳にしたことがあるはずだ。アル・パチーノやジェイソン・ステイサム、ゲイリー・オールドマンといった名だたる海外俳優の吹き替えを務め、声優としても『ＳＰＹ×ＦＡＭＩＬＹ』『ＯＮＥ ＰＩＥＣＥ』といった作品に参加。
　かと思えば、俳優として２０２２年上半期のＮＨＫ連続テレビ小説『ちむどんどん』で、主人公一家の良き隣人・前田善一役、１０月からの『エルピス－希望、あるいは災い－』（フジテレビ系）では、長澤まさみと眞栄田郷敦の前に立ちはだかる大門雄二副総理を演じている。
　人の心を動かす俳優の深奥にあるものはーー。【第３回／全４回】

　２０２２年、山路さんは『ちむどんどん』や『エルピス』などのテレビドラマ以外で、大人気アニメ『ＳＰＹ×ＦＡＭＩＬＹ』（テレビ東京系）のヘンリー・ヘンダーソンや、『惑星のさみだれ』（ＴＢＳ系）の秋谷稲近の声を担当。１０月にはミュージカル『ジャージー・ボーイズ』で大物マフィアのジップ・デカルロ役も務めている。

　俳優、声優の両方で超一流として活躍する山路さんは、どのようなキャリアを歩んできたのか。

――今年は、『ちむどんどん』、『エルピス』、『ジャージー・ボーイズ』、さらに声優としての仕事もあり大忙しの１年だったと思います。多忙なスケジュールでも健康を維持するために心がけていることはありますか。

　はい、ないですね。ひたすら頑張るみたいな感じ、いや、もうよく持ってきたなと思ってはいますけど……。なんですかね。まあ、でも色々精神的に溜まってくると、うちに帰って猫に癒されてます。こう、猫を吸って……ロシアンブルーのスヴィちゃんとルルちゃんに癒されてます。

■２年前に結婚した朴璐美さんとのプライベートは？

――２年前、同じく俳優、声優として活躍する朴璐美さんとご結婚されましたが、俳優・声優同士のご夫婦として何か特別な点はありますか？

　ないですよ（笑）！　まあ、お互い”家でリハーサルしなきゃいけない”ということがあり、別の部屋でやりゃいいのに、同じ場所で顔合わせて、お互い違うことをやってたりしますね。

――すごいですね。ぶつかり合わないですか？

　ぶつかりますよ。しょうがないから"うるさいよ！”とお互い言いながらやってます。

　ただ、センスというか方向というか、思考が近いところがすごくあるんです。そういうので話し出すと、夜中の３時４時になっちゃうことはありますね。

　喋りはまあ、私より妻がペラペラ喋ります。喧嘩ばっかりしてますけどね（笑）。

■洋画の吹き替えの演じ分けで意識していることは？

――洋画ではジェイソン・ステイサム、アル・パチーノ、ゲイリー・オールドマンなど多数の俳優さんの吹き替えを担当されていますが、演じ分けで意識していることはありますか？

　自然に変わっちゃうんでしょうけど、ジェイソン・ステイサムは声が似てるらしくて、それが楽っていうだけですね。

　いろいろ咳とか、それから叫びとか、そういうのはジェイソン・ステイサムのまんま。そうすると自分で区別がつかなくて、“これ自分が入れたのか、入れたんじゃないのか”ってのはありますね。

■プロフィール
山路和弘（やまじ・かずひろ）
１９５４年６月４日生まれ、三重県伊賀市出身。１９７９年、劇団青年座に入団。俳優、声優、ナレーションなど幅広く活躍。２０１０年度第３６回菊田一夫演劇賞の演劇賞を受賞。２０１７年度毎日芸術賞を受賞。また、２０２１年３月、第１５回声優アワードで外国映画・ドラマ賞を受賞している。吹替の担当俳優はジェイソン・ステイサム、ウィレム・デフォー、アル・パチーノ、ゲイリー・オールドマンなど多数担当している。