昨年２０２２年には映画『シン・ウルトラマン』が社会現象を起こしたり、テレビドラマ『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』（テレビ朝日系、毎週日曜日朝９時３０分から）が「ネット流行語１００」（ピクシブ・ドワンゴ）にて４位にランクインしたり、ブームが起こりつつある特撮界隈。今年は映画『シン・仮面ライダー』も控えており、いよいよ特撮の時代が来るのかもしれない。

　今回、当サイトでは、特撮好きが高じて特撮に関するコラムを執筆したり、東映公式の配信コンテンツ『ウラ仮面ライダー』のＭＣを任されたりと、自他共に認める特撮芸人である篠宮暁（３９）に直撃取材を敢行。

　特撮をまだあまり知らない人、「これから見てみたい！」という人のために、『特撮完全補完計画』インタビューを試みた！
【＃１～３のうち２】

――今でこそ特撮好き芸人として知られる篠宮さんですが、当初は芸人仲間にも、特撮好きは明かしていなかったんですよね？

「それは子どもの頃からのことなんですが、芸人になってからも特撮好きってしばらく言ってなかったですね。

　特撮好きを明かすキッカケは、大阪のバラエティ番組で『好きなものベスト３』みたいな企画の打ち合わせでスタッフさんに、“篠宮君は好きなものないの？”みたいに聞かれて。“いや、お笑いが好きなのに何で他に好きな事聞かれなあかんねん？”と思っていたんですけど（笑）。

　で、そこで初めて特撮の話をしたんです。“ヒーローが好きです”みたいに。それで、“変わってるヒーローとかいないの？”“変わってるかどうかわかんないですけど、『デンジマン』（１９８１年）でアイシーっていう犬がいて、仲間を連れてきて……”て話をしたら“何それ!?”って。

　普通だと思っていたことが、“面白いね”みたいになったんです」

――なるほど～（笑）。

「『バイクロッサー』（※）ってヒーローがいて、必殺技の時はバイクを担ぎます、みたいな。それを番組でやったんですよね。わざわざ絵をかいてもらったりして。それが盛り上がったんです。で、“あ、言うてええんや”っていうのがそこで初めてわかってから、公で言うようになりました」

（※１９８５年放送の『兄弟拳バイクロッサー』のこと。石ノ森章太郎原作で、戦隊や仮面ライダーなどとは違う独立した作品）

――小芝風花さん主演でドラマ化もした『トクサツガガガ』（小学館／ＮＨＫ）は“周囲に特撮オタクと言えなくて悩むＯＬ”を描いた作品でしたが、主人公の気持ちは分かりますか？

「無茶苦茶わかります。女性が誰にも言えずオタク活動をする……あの気持ちはめちゃくちゃわかります。女と男の立場は違いますけど」

――特撮好きを言っちゃダメな空気があったんでしょうか？

「ですね。言っていいことはないだろうなって……。女の子に言ったら“えぇ……”ってなるだろうし、友達に言ったらバカにされただろうし。１０代の多感な時期は完全に隠してましたね」

――なるほど～。２００１年に『仮面ライダーアギト』に要潤さん、『百獣戦隊ガオレンジャー』に玉山鉄二さんが登場した時期から、世間的に特撮ヒーローが評価され始めていた感覚がありますよね。

「『アギト』くらいの頃に僕は１８歳で。高校卒業して芸人になってるころだったんで、もうその頃には、フラットに観れていましたね」

■「同級生のみんなが“ＳＰＥＥＤが好き”とか言ってるなか“オーピンクが好き”とか絶対に言われへん！（笑）」

――ということは、子どものころはモテていなかったんですね。

「モテてなかったですね。モテたくて芸人になったので……あと、『オーレンジャー』（※）にさとう珠緒さんが出てて、“オーピンク”をやっていたんですけど、そのオーピンクがめちゃくちゃ可愛かったんですよ。もうとにかく可愛くて。

　そのとき僕は中学生やったんですけど、いままでヒロインが出ていてもフラットに観れてたのが、初めて、恋愛感情みたいなのが湧き出したんですよ。そのときめちゃくちゃ思ったのが、“うわっヒーロー番組なのに恋愛感情持ってしまってる！　アカン！”みたいな。“ますます言われへん！”みたいな感じでしたね（笑）」

（※『超力戦隊オーレンジャー』：１９９５年放送の作品。さとう珠緒が“オーピンク／丸尾桃”として出演していた）

――さとうさん演じる桃ちゃん（オーピンク）は可愛かったですからね！

「本当に可愛かったです。当時、同級生のみんなが“ＳＰＥＥＤが好き”とか言ってるなか“オーピンクが好き”とか絶対に言われへん！（笑）」

――それは友達と話が合わないですよね。

「合わない合わない。でも、その後にさとう珠緒さんが売れはるんで、『オーレンジャー』の話はしないけど、さとう珠緒さんの過去の話は知ってるわけですよ。戦隊好きで得したことといえばそれかもですね。売れる前の女優さんや俳優さんのことを知ってる」

――でも、それは言わないと。

「さとう珠緒さんが売れたときに、友だちがフワッと言うんですよ。“『オーレンジャー』っていうのに出ていたらしいよ。見ようぜ”とか。でも僕は、“そんな子ども臭いことすんなよ”って知らないフリをしていましたね（笑）。複雑な感じですけど、これは、僕と同じくらいの世代の方なら共感していただけるのではないでしょうか」

――以前、『アメトーーク！』（テレビ朝日系）でドランクドラゴンの塚地武雅さん（５１）が特撮俳優のことを、「世間がキャーキャーいう前から俺たちはキャーキャー言ってた」という話をしていましたが、すごく気持ちが分かります。

「まさにその感じですよ」

――特撮を通して仲良くなった芸能人の方はいらっしゃいますか？

「武田航平くんですね。カシラですね。『キバ』の時に知り合って、『ビルド』の時もちょこちょこ絡んで。この間はラジオもやらせてもらって、みたいな」

（※武田は２００９年放送の『仮面ライダーキバ』で“紅音也／仮面ライダーイクサ”を、２０１７年放送の『仮面ライダービルド』で“猿渡一海／仮面ライダーグリス”を演じた俳優。『ビルド』では”カシラ”の愛称で慕われていた）

――知り合ったきっかけは？

「雑誌の取材で。僕は直接取材する側ではなかったんですけど、担当の人に“音也の人だけど来る？”って誘っていただいて、取材現場に行かせてもらえたんです。そこで連絡先交換して。

　で、『キバ』のイベントがあると“こんなのあるけど来ます？”とお誘いしてもらったり。それでしばらく音沙汰なかったんですけど、『ビルド』で復活して、インスタでつながって。特撮のトークライブとかやる時にも来てくれたりとかという感じですね。

　あと、『平ジェネＦＯＲＥＶＥＲ』（※）の打ち上げで“これ、景品当たったのでお子さんに持って帰ってあげてください”とか」

（※２０１８年の映画『平成仮面ライダー２０作記念 仮面ライダー平成ジェネレーションズＦＯＲＥＶＥＲ』のこと。佐藤健がサプライズ出演しファンの度肝を抜いた）

■「出られるだけ最高」と言いつつもやっぱり「変身」がしたい！

――お笑い芸人の方では？

「ゴー☆ジャスが結構特撮好きで。一緒にトークライブしたりしてました」

――篠宮さんは、エキストラ的に『仮面ライダー』映画などにゲスト出演することがありますよね。いつかネームドキャラになりたい欲望はありますか？

「もちろんです。それこそ『ギーツ』は『デザイアグランプリ』ごとに参加者が一新されるわけじゃないですか。ちょい役でも出してもらえる機会があったらいいなと思います」

（※２０２２年スタートの『仮面ライダーギーツ』は多数の仮面ライダーが生き残りゲーム『デザイアグランプリ』に挑む、という物語）

―それこそ、『ギーツ』で芸人はあべこうじさんも出ていましたね。善玉か悪玉か、希望はありますか？

「そこはどっちでもいいんです」

――とにかく“変身”がしたい、と。

「そうなんです。むちゃくちゃ贅沢だし、出られるだけ最高なんですけど」

――戦隊やライダーにハマりすぎたせいでやりすぎてしまった失敗談などはありますか？

「失敗ということでは……『仮面ライダー電王』（２００７年）に出させてもらったときに、“はじめて特撮に、東映の仕事に関われる”っというのがめちゃくちゃ嬉しくて。セリフを覚えていくのはもちろんとして、モモタロスやウラタロス（※）のセリフを現場で、全然流れに関係ないのに挟みこもうとしたんですよ」

（※『電王』は個性豊かな善玉怪人が人気を博しており、彼らの名前は“○○タロス”だった）

――アドリブを入れちゃったんですね。

「ですね（笑）。で、僕が行った回の監督がめちゃくちゃ怖いことで有名な石田監督（※）だったんですけど、台本にはないのに“最初からクライマックスだぜ！”みたいなことを言ったら、“そういうの大丈夫だから”って言われて、“すみません”として。

　でも、完全にテンションが上がっているので、キャンディをもらうだけのシーンなんですけど、“もらうけどいいよね？　答えは聞いてない！”って付け加えて。そしたらやっぱり石田監督から、“だから、入れなくて大丈夫だから”って注意を受けて。

　でも、僕はまだ懲りてなくて、そのあとに、“キャンディもらって泣けるで！”みたいにキンタロスを意識したセリフを言ったら、石田監督がついに、“もういいっつってんだろぉっ！”と愛あるご指導を受けました（笑）」

（※石田秀範監督。とんでもなく厳しい鬼監督だが、要潤や竹内涼真、綾野剛などにプロ意識を芽生えさせた名監督でもあり、“怖かった”と言いつつも慕う出身俳優は多い）

「 “すみませーーん！”って謝りました（笑）。でも実は、怒られるのも嬉しかったっていうか……そんな舞いあがった心境でしたね。

　せっかく出るんだったら、爪痕残そうと思っていたんですよね。違う爪痕の残し方しようとしちゃいましたけど（笑）。とにかく、“これだけ好きやねーん！！”っていうのを知ってもらいたくて。それこそベルトも巻いて行っちゃいましたしね（笑）」

篠宮暁（しのみや・あきら）

１９８３年２月８日生まれ。京都府出身。松竹芸能所属。屈指の“特撮大好き芸人”として『仮面ライダー』など特撮作品にかける情熱は凄まじく、毎週リアルタイムで感想をツイートしているほか、特撮コラムの執筆なども精力的に行なっている。また、日本漢字能力検定（漢検）準１級に合格しており、子供向け漢字ドリルも出版、多方面で活躍している。