理解できる?”鉄道信号機の恋愛”を描いた宮沢賢治の短編童話「シグナルとシグナレス」が実にシュール

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理解できる?”鉄道信号機の恋愛”を描いた宮沢賢治の短編童話「シグナルとシグナレス」が実にシュール

日本では昔から、さまざまなモノやコトを人間に見立てて表現する擬人化カルチャーが盛んです。

捨てられたモノたちに憑いた九十九神たち。『百鬼夜行絵巻』より

古くは鳥獣戯画(ちょうじゅうぎが)や九十九神(つくもがみ)など、動植物は言うに及ばず道具などの無機物に至るまで、多彩なストーリーが今日もどこかで生み出されています。

そんな中、今回は日本文学史上に名高い童話作家・宮沢賢治(みやざわ けんじ)の短編童話「シグナルとシグナレス」を紹介。

シグナルとはその名の通り鉄道信号機、シグナレスはその女性名詞。互いに愛し合う鉄道信号機の物語は、どんな展開を見せるのでしょうか。

身分違いの恋に悩む二人は……

舞台は賢治の地元である岩手県・花巻駅。この駅は東北本線と軽便鉄道(現:釜石線)が発着しており、本作世界では東北本線>軽便鉄道という格差が存在するそうです。

「若さま、いけません。これからはあんなものにやたらに声を、おかけなさらないようにねがいます」

※本文より。シグナルの後見人を務める電信柱が、シグナレスに声をかけたことを咎める場面

シグナルは東北本線で勤務する金属製の信号機、シグナレスは軽便鉄道で勤務する木製の信号機。身分違いの恋心に葛藤しながら惹かれ合う二人の様子が、何ともユニークに描かれます。

鉄道信号機。画像:Wikipedia(Tam0031氏)

「もちろんいけないですよ。汽車が来る時、腕を下げないでがんばるなんて、そんなことあなたのためにも僕のためにもならないから僕はやりはしませんよ。けれどもそんなことでもしようと言うんです。僕あなたくらい大事なものは世界中ないんです。どうか僕を愛してください」

※本文より

いよいよ互いの想いが通じあい、婚約の証として結婚指輪(エンゲージリング)の代わりに環状星雲(フィッシュマウスネビュラ)を交わした二人。

しかし周囲の反対によって結婚を阻まれ、二人は駆け落ちを考えます。が、いかんせん信号機ですから一歩たりとも動けません。

そんな二人がある深い霧の夜、互いの顔も見えずに悲しんでいると、倉庫の屋根が二人におまじないを教えました。

「そうか、ではおれが見えるようにしてやろう。いいか、おれのあとについて二人いっしょにまねをするんだぜ」
「ええ」
「そうか。ではアルファー」
「アルファー」
「ビーター」「ビーター」
「ガムマー」「ガムマーアー」
「デルター」「デールータァーアアア」

※本文より

呪文を復唱する口調にだんだん力が入っていく表現に、二人の必死さが伝わります。そして互いを想う一念が通じ合い、ついに奇跡が起きるのですが……。

物語の結末は、是非とも読んでみて下さい(無料の青空文庫で閲覧できます)。

終わりに

以上、宮沢賢治の短編童話「シグナルとシグナレス」を紹介してきました。

宮沢賢治。画像:Wikipedia

本作は岩手県のローカル新聞「岩手毎日新聞(昭和8・1933年廃刊。現代の毎日新聞とは無関係)」大正12年(1923年)5月11日~23日に全11回で連載されたもの(16日、19日は休載)。宮沢賢治が生前に発表した数少ない貴重な作品として知られます。

信号機が愛し合い、電信柱や倉庫がおしゃべりをする世界。賢治の豊かな感受性がいかんなく発揮された作品と言えるでしょう(ちょっと前衛的すぎて、当時は理解されなかったかも……)。

宮沢賢治と言えば「セロ弾きのゴーシュ」「注文の多い料理店」「銀河鉄道の夜」なんかが有名ですが、他にもマイナーな童話がたくさんあるので、皆さんも賢治の“沼”にハマってみてはどうでしょうか。

※参考文献:

宮沢賢治『セロ弾きのゴーシュ』角川書店、1993年5月 宮沢賢治 シグナルとシグナレス(青空文庫)

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