100歳以上の人の遺伝子を移植すると心臓が若返ることが判明
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厚生労働省の2022年のデータによると、日本の男性の平均寿命は 81.47 年、女性の平均寿命は87.57年だそうだが、もちろん個人差があり、中には100歳を過ぎても元気な人もいる。
「センテナリアン(百寿者)」と呼ばれる100歳以上の人たちが持つ遺伝子には、若返らせる力があることが、新たな研究で明らかとなった。
イギリスとイタリアの研究チームが、長寿の人の遺伝子をマウスの心臓に移植してみたところ、人間なら10歳に相当するくらい若返ることが確認されたのだ。さらに人間の細胞で試したところ、同様の効果があることが明らかとなった。
『Cardiovascular Research』(2023年1月13日付)で発表されたこの成果は、将来的に人間の心臓病の治療やアンチエイジングに応用できると期待されている。
・長生きの人に共通する遺伝子変異体
人は誰でも老いるものだが、その速度は人それぞれだ。
実は、100歳を超えても元気な「センテナリアン」や「百寿者」と呼ばれる長生きな人たち共通する遺伝子があることがわかっている。
それは「BPIFB4」という遺伝子の変異で、それが彼らの心臓や血管の健康を守っているようだ。
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・長寿遺伝子変異体がマウスの心臓を若返らせる
今回、ブリストル大学のパオロ・マデッドゥ教授らは、それを高齢のマウスの心臓に移植してみた。
すると、その心臓の生物学的年齢が若返ってしまったのだ。その若返り効果は、人間なら10年にも相当するほど強力なものだったという。
この方法は中年のマウスにも有効で、BPIFB4長寿変異体を移植したところ、心臓の衰えを予防することができた。
心臓と血管が衰える速さは、お酒やタバコ、あるいは座りっぱなしの生活など、さまざまな要因によって左右される。
この実験からは、遺伝子の変異もそうした要因の1つであることがわかる。
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・人間の心臓細胞も若返らせることが判明
一方、今回の研究論文の共著者であるマルチメディカ・グループのアニバーレ・プーカ教授らは、このBPIFB4長寿遺伝子変異体を人間の細胞にも試している。
重い心臓病をわずらう高齢者から心臓細胞を採取し、それにBPIFB4長寿変異体を与えてみたのだ。
プーカ教授らの研究では、こうした高齢の心臓病患者は、とりわけ「周皮細胞」という新しい血管の成長をうながす心臓細胞の機能が弱く、老化していることが明らかになっている。
だがそうした細胞にBPIFB4長寿変異体を与えてみると、心臓の機能が回復し、上手に新しい血管を作れるようになったのである。
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・心臓病の遺伝子治療やアンチエイジングの可能性に期待
100歳以上を生きるセンテナリアンが子供を作れば、彼らの長寿遺伝子は自然に受け継がれていくという。
だが、今回の研究ではそれを赤の他人に分け与え、心臓を若返らせられることが初めて証明された。
つまりはBPIFB4長寿変異体を、親があまり長生きできなかった人や、心臓が悪い人たちの治療に応用できる可能性があるということだ。
なおマウスの実験では、BPIFB4長寿変異体で動脈硬化や糖尿病などを予防できることもわかっている。将来的には、人間でも同じ効果が得られるかどうか試されることだろう。
また遺伝子そのものではなく、それが作り出すタンパク質を治療薬にするという手もある。遺伝子移植もタンパク質による治療もどちらもあり得るが、より安全で手軽なのは後者だ。
今後、BPIFB4長寿変異体よりもっと強力な長寿遺伝子が見つかる可能性もあるという。
だがいずれにせよ、マデッドゥ教授もプーカ教授も、今回の研究がセンテナリアンの力を借りた新しい治療をインスパイアするだろうと確信しているそうだ。
References:January: anti-aginggene | News and features | University of Bristol / Transplanting a Gene Common in Centenarians Could Rewind The Heart's Age by Years : ScienceAlert / written by hiroching / edited by / parumo
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