「成果主義を捨てるべき」 人材不足にあえぐ保険業界への提言 (2/2ページ)
――成果主義を採り入れていない保険代理店はあるんですか?
稲葉:ないかもしれません。もちろん、きれいごとばかり言っても仕方なくて、保険がちゃんと売れていることは言葉を変えれば、それだけ多くの顧客の課題に対して保険という商品で応えたということにもなりますし、売れていないとそれこそ会社の成長につながらないのですが、この仕事って顧客への準備が整っていなくても偶然契約が取れて、大きな保険料をお預かりできることもあるんです。
完全な成果主義でいうと、こうした「偶然」による契約であっても評価されることになります。だけど、それでは再現性がありません。本来なら営業としての力がついて、再現性の高いやり方で契約をお預かりする、お客さんからの信頼も積み重なっているからこそ会社は高く評価をしたいわけで、「契約件数」だけを見る形の成果主義だとここのプロセスの部分がないがしろになるんですよね。
――逆にこれまでの保険業界でフルコミッションをはじめとする「成果型」が採用されてきたのはなぜでしょうか。
稲葉:私が思うには、終身雇用で年功序列といった昔の日本型経営を採用している会社が主だった時代は、若い人は稼げなかったんですよ。でも、保険業界はキャリアもなにも関係なくて、売ったら売っただけ稼げたわけです。そこに魅力を感じて集まる人が多かったので、このスタイルが続いてきたのではないかと思います。**
それに、フルコミッションであれば時間をかけて、人材に投資したり、教育したりするよりも、新たに人を採用した方が、効率がよく。一定期間、成長できなかった人材は退職していく事が多いように思います。つまり、マネジメントが必要ないので会社側は楽なんですよね。一方で企業文化や風土などは育たず、経営ガバナンスは弱くなりがちです。そのため、保険業界はストックビジネスで、属人性の高い業界ですので、法人化している保険代理店でも「個」が強く「組織」が脆弱なのは人材に投資をしようという、普通の会社なら当たり前の企業活動への意識が薄いからかもしれません。
――本書ではこうした成果主義を続けていると今後保険業界は立ち行かなくなると指摘されています。その理由の一つとして、営業マンをやりたがる人が減ってしまう点を挙げていましたね。
稲葉:お金を稼ぐためにプライベートを犠牲にして体を酷使して、という人はどんどん減ってきているように思います。お金はほどほどでいいけど、自分の時間を楽しみたいというようなメンタリティの人にとって保険業界が魅力的に見えるかというと、そうではないと思うんです。
(後編につづく)